1月15日(土) JXサンフラワーズ vs 日本航空JALラビッツ 試合後のインタビューとゲームレポート

先日の全日本総合選手権で優勝したJXと、今シーズン限りで廃部し、新潟のNSGグループへ譲渡される事になるJALラビッツという注目のカードは、新潟のバスケファンの前でラビッツが今シーズン無敗のJXを下すという好ゲームとなりました。試合後の記者会見の様子はこちらです。

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JXサンフラワーズ:#1大神雄子選手

-今日の試合について
「先週の(オールジャパン)決勝の後、すぐリーグ戦だという切り替えが出来なかったのと、若さが出たと思います。気持ちも含めて、JALさんが上回っていた結果だと思うし・・・ちょっと調子乗ってると思いますね。

なんだかんだでリーグの最初のほうは、良すぎたところがあったんじゃないかなと。90点取ったりとか。(今日は)ちょっと立て直しが効かなかったですね。オールジャパンは何とか勝った優勝だったので、満足はしてないんですけど、それが自然に出ちゃってるのかなと。

今年は突っ走れるならどこまでも勝ちに行くという事が全員が思っていた事だと思うし、決して今日負けるつもりではなかったんですけど、やはりオールジャパン後の一発目ということで、自分達がしっかり切り替えが出来なかった、優勝して満足したというのが表に出ちゃったんで、残念です。やはり、リーグ戦中は何があるか分からないですから、しっかり対応していかなければいけないかと思います。修正しなきゃいけないところはたくさんありますね。

(チームが)若いので、負けた後は切り替えなきゃいけないし、また明日もあるので、そこは上を中心になんとかまとまらなければいけないと思います。」

-故障者が多い中で、これまでが上手く行き過ぎたということでしょうか?
「逆に(うまく)行き過ぎていたから、こういう所で自分達が喝を入れる為の負けだと、受け入れるべきだと思うし、そういう風に考えていくしかないですね。リーグは28試合あるので、ひとつひとつ勝っていかないといけないと思います。」

-序盤にリードされるのはいつもの展開でした
「そうですね、最初は競って最後の最後で(勝つ)、というところはあったので、そこが(今日は)踏ん張りきれなかったのは自分達のこれからの課題であるし、自分達はプレイオフに向けてしっかり課題を修正していけば、今日の負けが必ず繋がっていくと今は思うしかないですから。」

-修正すべき点は?
「今日に限ってはリバウンドで負けてますからね。ウチのチームは諏訪が居なくても正直インサイドは強いですから、矢代さんにリバウンド取られる、高橋礼華さんに大事なところでオフェンスリバウンドを取られる、ということは絶対にあってはならない事ですから。そこはチームでもそうだし、インサイドの選手もプライドを持ってやるべきだと思います。自分達もそこ(インサイド)は武器なんだという事は常にアピールしていきたいので、インサイドの選手もアウトサイドの選手も、どこを中心にしてやるのかという意図が、もうすこしちゃんとしないとですね。諏訪の代わりに間宮が出ても、間宮もしっかりやらないとだし、諏訪がいなきゃダメだったとは言われたくはないですから。」

-JALのゾーンディフェンスについては?
「来ると思ってたんですけど、思っていた以上に変則的でしたね。しっかりガードのところを切ってきましたし、インサイドのところも止まっちゃった、動きを作れなかったのは自分達の課題かなと。アジャストはしっかりやってきたんですけど、思っていた以上に変則のゾーンだったので、ドライブで切っていくのか、逆にギャップを攻めて行くのか、という所で上手く攻められなかったです。」

-ハーフタイムでの修正は?
「渡嘉敷をインサイドに持っていったのが修正でした。第3Qの最初にポンポンと6点まで詰められたのは良かったんですけど、その後のリバウンドかなと。」

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JALラビッツ:荒順一HC

-WJBLとbjリーグでの初の共同開催という事で、今日の試合を終えた感想は?
「bjさんと一緒にやるというのは今シーズンが初めてだったのですが、会場を見て、新潟の人達のバスケットに対する熱が伝わってくる大会でした。それを頂きながら、我々もゲームが出来たんじゃないかと思います。」

-来シーズン、チームが新潟のNSGグループに譲渡される事について
「まだはっきりと決まってない事もあるんでしょうけども、意識の中には当然ありましたし、この新潟の地でラビッツの姿を見せられたというのは、本当に我々にとっては・・・奇跡なんですかね。何か新潟からパワーをもらったんじゃないでしょうか。」

-会場ではJALラビッツの応援も多くありました
「はい、ありがとうございます。毎試合、ラビッツが最後という事で応援に駆けつけてくれているのですが、オールジャパンあけに女王を倒せたという素晴らしい結果に終わり、また新潟という地ということで、本当に思い出深くなりましたね。」

-リーグ首位のJXに新潟で勝てたというのは大きいでしょうか?
「本当に大きいというか、ちょっと信じられません。いつ逆転されるのかとハラハラしてたんですけど。オールジャパンでの富士通戦も、前半11点勝っていて、後半足が止まって、という所だったんですけど、今日は控えの選手達を信じて早めに起用して、スタミナも含めてトータルの戦い方としてやっていこうという事でした。控えの選手達が活躍できたのが大きいと思います。今日はよくシュートを決めてくれたというのはあると思います。思い切ってシュートを打ってくれました。」

-準備していたゾーンディフェンスについて
「上手くはまりましたね。戦い方としてはただのゾーンだけではダメなので、高さと外角のシュートを抑えながらということで、ゾーンとマンツーマンを合わせたようなディフェンスシステムにしたというのがあります。それが上手くいったということもあると思いますけど、でもJXさん(相手)に得点が77ですね。(得点が)70点くらいのゲームになるだろうと思ってたんですけど、JXさんが64ということで、これはディフェンスも成功したし、オフェンスもやってきたことが十分に功を奏したと思います。」

-具体的にどのようなゾーンディフェンスでしょうか?
「明日もまだ試合があるのであまり詳しくは言えませんが、ゾーンというのは普通、地域を守りますが、インサイドで高さで負ける所はマンツーマンで、外側から入ってくるものに対してはゾーンで。単純に言えばそのような形です。」

-これはJX対策として考えたという事ですね?
「はい、余りに高さが違うので。今日も190が2枚出てきたと思いますけど、やはりインサイドでの確率は高いですから、そこは何とか少なくしたいと考えていました。」

-今日はオフェンスリバウンドがよく取れました
「そうですね、それは本当に選手達の頑張りだと思います。」

-今日の試合がプレイオフ進出に向けてのいいきっかけになるでしょうか
「なればいいと思います。まだ諦めたくないので。4つに残りたいという我々の最初の目標がありますから、上位チームを食わなければいけないというのはありますけど、そこに向かって今日を皮切りにまた頑張れると思います。」

-改めて、新潟での試合という事に関しての思いをお願いします
「はい、新潟の人達、また協会、その他各チームの部長さんも、新潟への譲渡に関しては一生懸命支援しようと動いておりますので、何とかこの地でまたバスケットが出来ればと思っています。」

-選手の去就については?
「まだはっきりとは決まっておりません。譲渡されれば、私は来たいと思っています。」

-新潟のファンに向けてのメッセージを
「是非新潟に来て、精一杯バスケットをしたいという思いは私自身あります。来年新潟に来ましたら、またラビッツのバスケットを頑張りますので、ご声援頂きたいと思います。」

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#11矢代直美選手

-新潟での試合という点について
「会場の雰囲気というのも、いつもWJBLで試合している雰囲気も、コートも違いましたし、観客の多さにも若干戸惑うところはありました。来年の話はよく分からないんですけど、ただ、もし私達を受け入れてくれる状況の中で、私達も愛されるチームとしてこっちに来たいと思っているし、とにかく私達の良さというものを新潟の人達に見てもらえれば、というのはありました。」

-今日の勝利について
「今日の試合はチーム全員が一丸になったというか、スタートの5人が出て、控えで出てくる選手もずっと繋いでくれたし、選手ひとりひとりの良さが、チームとしてよく機能してくれたと思います。監督、スタッフも含めて、私達がやりたいと思っているバスケットのスタイルを40分間貫きとおした事が今日の勝因だと思ってます。」

-具体的に今日の勝利の要因とはなんでしょうか?
「今シーズンに関しては、私たちは前半まで自分達のプレーが出来ても、後半崩れてしまったり、4Qで逆転を許す試合が何試合もあったので、40分間通してチームとしてのバスケットをやっていきたいという思いがあったのですが、今日は40分間戦えたといのが勝因だと思います。」

-そこに新潟のファンの応援もあったでしょうか
「それも後押しの1つだったと思います。」

-今日はWJBLに憧れる女子バスケの子供たちもたくさん応援に来ていましたが、そんな新潟のファンにメッセージをお願いします。
「今日は会場を見た感じで女子の学生がいつもより多いと私も感じていました。私達のいるトップのリーグというのは本当に魅力のあるリーグだと思うし、目指す価値のあるリーグだと思っているので、ひとりでも多くの人がここを目指して頑張ってもらいたいと思います。その為に私達がこのリーグを活性化させる責任もあると思っています。その意味で明日の試合も、もう1度精一杯やりたいと思います。」

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#8岩村裕美選手

-新潟での試合について
「新潟の方達が応援してくれて、その声がすごく聞こえてきて、私達が後押しされたというか、チーム全員が元気よくバスケットが出来たと思います。」

-JX相手に勝利を収めた事について
「JXに対してずっと練習してきて、その練習の成果が出せたという事がすごく嬉しかったし、今まで白星で来ていたJXに黒星を付けたということで、自信にも繋がります。明日もありますが、これからのリーグ戦をみんなで頑張っていきたいと思います。」

-新潟でそのような試合が出来たという事について
「そうですね、すごく応援してくれているのが伝わってきたので、勝てた試合を見せられたことは、すごく良かったと思います。」

-後半、JXに追い上げられた場面について
「あせらずに一人一人が逃げないで攻めようというのは、ベンチもそうだし、中で戦っている5人も話していたので、思い切ってやろうという気持ちのほうが強かったです。」

-新潟のファンに向けてのメッセージをお願いします
「私達のチームは身長が低いんですけど、低くてもチーム一丸となれば勝てるし、練習してきたことを出せれば良いプレーもできるので、それぞれ自信を持って頑張ってほしいと思います。」

-チームが新潟のNSGグループに譲渡される事について
「まだリーグ戦に対しての気持ちが強いので、まだはっきり話せないんですけど、今日、会場を見て、すごくたくさんの人が応援してくれているんだなという事は感じました。」

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以下、ゲームレポート

【WJBL】JXサンフラワーズ vs JALラビッツ@新潟市東総合体育館(2022.1.15)

JX-JAL
第1Q 12-24
第2Q 23-21
第3Q 12-15
第4Q 17-17
最終スコア 64-77

【スタート】
JX:#1大神、#7寺田、#10渡嘉敷、#12吉田、#21間宮
JAL:#1高橋、#5山田、#8岩村、#11矢代、#34出岐

【レフリー】
渡邊整、岩田千奈美、小坂井郁子

【観客者数】
2,830人
※当該試合での観客数、同日のbj開催も同数

【主な個人スタッツ】
JX:間宮20pts、6reb、寺田17pts、渡嘉敷12pts、10reb、4ast、3blk、大神9pts、4ast、吉田7reb、4ast
JAL:岩村24pts、FG9/28(3pt4/7)、5reb、矢代14pts、FG7/11、13reb、6ast、大和谷13pts、FG6/12、5reb、山田10pts、高橋9pts、8reb

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WJBLは上記を含むスタッツと、Q毎のレポートがアップされていますので、ここではゲーム全体での戦評をまとめてみたいと思います。

まず、大前提としてJXは前週のオールジャパン優勝からコンディションを整えきれなかったこと、そしてJALはこのJX戦に向けて意識を集中していた、その差が結果として現れました。

また、JXはスタートの諏訪が欠場。諏訪不在でもインサイドにはスーパールーキー渡嘉敷、そして間宮と山田が控えていますから、WJBLでも最も身長が低いJALに対しては大きなアドバンテージがあるはずですが、そこをJALは上手く守りました。

ゲームは序盤からJALペース。荒監督曰く「この為に準備してきた」という2-3ゾーンが機能し、JXのフロントラインに楽に仕事をさせない。このゾーン、ベースは2-3ですが真ん中の矢代(or高橋)がフレックスに動き、JXの渡嘉敷、間宮にポジションを簡単に与えない。矢代はJXのポストに対して時にはフロンティングしつつも基本は下で守り、ポストに入った時は上のディフェンスが素早く下がってプレッシャーをかけるというもの。

この形であれば、ポスト1人を守るのは何とかなっても、ダブルポスト相手では苦しい。ところが、ここで諏訪の欠場が影響してきます。渡嘉敷が圧倒的にタレントで優れているのは事実ですが、諏訪のゴール近辺での存在感はやはり大きい。ここまでの諏訪はチームトップの13.56pts(リーグ5位)、FG58.71%(同1位)、FT89.74%(同2位)、リバウンド7.5(8.5の渡嘉敷に次いで同5位)と、チームだけでなくリーグを代表するCです。諏訪がポストでポジションを確保するからこそ、ミドルでも動ける渡嘉敷も生きてくるのですが、この諏訪に代わる間宮があと一歩そのパフォーマンスが足りませんでした。もちろん間宮ここまでのスタッツは十分な数字と言えますが(8.94pts、FG53.3%、4.81reb)、チームで効果的にゴールを守るJALに対してはその実力を発揮出来ませんでした(FG8/15、ターンオーバーはチーム最多の4)。言うまでもなくこれは間宮ひとりの問題ではありません。JALのゾーンに対しパスを回しきれず、苦しいインサイドだけでなくアウトサイドも不調でした(3ptFGは1/8)。

やはり大きかったのはこのJALのゾーンで、シーズン平均76.75pts(リーグ1位)のJXを64点に押さえ込んだことが勝利に結びつきました。JXはFGが38.6%(26/.71)と、シーズン平均の48.79%を大きく下回りました。

また、リバウンドでは矢代を筆頭にチーム全体でボールに絡み、シーズン平均45reb(リーグ1位)のJXを38に押さえ、JALとしてもこれまたシーズン平均34.62(リーグ7位)を10も上回る44本を奪い取りました。

つまり、3pt平均本数が1.15本とリーグでも断トツに少ないJXの、つまりその圧倒的なインサイド依存型オフェンスの生命線であるポストを封じることによって勝利に近づくというJALの目論見が見事に決まったと言えます。

また、言うまでもなくディフェンスだけでなくオフェンスでも成功しなければ王者JX相手に勝利はありません。この試合でJALはシーズン平均65.5ptsを大きく上回る77ptsを記録。JALは今シーズンJXに2敗していますが、そのいずれも50点台に押さえられていました(54-72、59-75)。諏訪の不在が少なからず影響したであろうディフェンスに対し、オフェンスはいつも通りのゲームを展開するしかありません。そして、その精度を上げるしかない。

まずはエースの岩村がそのシュート力でチームを引っ張ります。チーム最初の4ptsは岩村、そしてディフェンスがプレッシャーをかければパスを回し、そして第1Qの最後には得意の3ポイントを決める。岩村は第1Qだけで11pts、第2Qでは3ptを2本沈め、前半だけでシーズン平均16.21ptsを上回る17ptsを記録。また岩村にプレッシャーの増した第2Qではポストの矢代がオフェンスの起点として機能し、前半を45-35の10点差で折り返しました。

シーズンを通じて後半になると踏ん張りきれないパターンの多いJALを、JXは第3Qの出だしから圧倒します。中心となるのはもちろんインサイドで、渡嘉敷と間宮のダブルポストのオフェンスが機能し連続6得点。ここでスコアはJALの45-41で4点差。誰もが「これはJXが逆転するな」と思った場面でした。

ところがJALは粘る。JALは後半を大和谷でスタートしたのですが、スタートの出岐は序盤の3pt1本の後はシュートが決まっていませんでした。ここで大和谷のスタート起用が当たります。JXのミスを速攻で得点に繋げると、ミドルショットを連続で決めて6連続得点。JXに傾きかけた流れをJALに引き戻しました。

JXとしては、後半出だしのインサイドアタックで一気に逆転したかったところですが、崩れないJALを前にそのプレーが乱れてしまう。ここで間宮はチームを引っ張ろうと、そして前半のビハインドを取り返そうと果敢にゴールにアタックを繰り返すも、これが空回りとなってしまいました。3秒OTやトラベリングなどミスが相次ぎ、この数分でターンオーバーを連発。内海HCはここで間宮をベンチに下げるも、この後、JXは流れを取り戻せなかった。

ここで間宮を責めるのは簡単ですが、大神のコメント通り、チームとしてオフェンスを組み立てられなかったJXが、その本来のチーム力を発揮できなかったと言えます。間宮は平均を大きく上回る20ptsを記録しましたが、ここではその間宮にオフェンスでのプレッシャーを抱えさせてしまったことがJXの敗因の1つとなりました。後半には渡嘉敷をよりインサイドで機能させようとしたようですが、実際には渡嘉敷の14ptsのうち、後半は4ptsのみ。ここはJALのディフェンスを評価すべき点です。

引き続きJALのオフェンス、第3Qの中盤以降は山田が積極的にゴールを狙い、大和谷に続いてチームを支えます。第4Qも大きな流れは変わりません。再び間宮がゴール下でアタックを繰り返すも、その確率は低い。

一方のJALは、第4Qの中盤になって岩村がボールに絡みます。試合を通じて吉田の厳しいマークに苦しんだ岩村ですが、序盤の活躍を受けて、さすがに後半はボールを触れない場面が目立ちました。しかし終盤になってキャプテンの意地を見せ、残り5分で久しぶりの3ポイントを決めます。ここに高橋のアグレッシブなオフェンスリバウンドからの得点が続き、残り5分を切って69-53の16点差に。

終盤には岩村の連続得点もあり、JALが77-64でJXに勝利。JXにシーズン初の黒星を付けました。

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JXとしては痛い痛い敗戦となりました。もちろんJALの好プレーはありますが、JXとしては自らのプレーをコート上で発揮できなかったことの方が痛手でしょう。諏訪の欠場、オールジャパンあけの調整不足、ここまで無敗、しかも確実に勝てるはずの相手。若い選手が多いチームだからこそ、そのメンタリティに課題を残す試合となりました。

一方のJAL。無敗のJX相手にその力を全て発揮できるとしたら、それは恐らく1試合だけでしょう。そして、この1試合目に全てを掛けてきました。その実力を余すことなく全て発揮するのは、いうまでもなく多くの苦難を乗り越えなければいけません。しかし、ラビッツはそれを最後までやり抜きました。まさにチームとしての奇跡的な勝利でした。