2011-12シーズン開幕の特集としてJBL各チームのヘッドコーチ、新人(または注目選手)へのインタビュー。今回はアイシンシーホース、鈴木貴美一HCです。
(文=定山 敬)
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鈴木貴美一HC
―今シーズンの目標は?
優勝です。
―選手の入れ替わりもあったが、手応えは?
そうですね、昨シーズンは天皇杯は出来たのですが、リーグのプレイオフは出来ませんでした。天皇杯は準決勝も決勝もギリギリの状態で勝って優勝出来て、レギュラーシーズンもギリギリな状態で1位でした。そんな中で佐古選手が引退し、網野、竹内公輔選手が抜けたにも関わらず、多くの人から大丈夫、大丈夫という電話や激励をいただいたのは、何故かなと思っています。
今までは竹内公輔選手がいた事で、その他のポジションに外国人フォワードやシューターといったサイズ小さい選手を補強していたのですが、相手に対しての差(アドバンテージ)は実は得点ではなくリバウンドではないかなと思う試合が多かった。うちの外国人が15点取っても、相手もマッチアップする選手と控えで15点くらい取られているといったように。
我々のアドバンテージは何かというと桜木選手です。彼は外国人選手とマッチアップしていて、うちの外国人選手は日本人選手とマッチアップしていて、何かあまり差が無い。
そこは改善したいと思っていたのですが、主力であった(竹内)公輔が抜いけたことでうちもインサイドの強い外国人選手を取ろうと。今まで以上に強いインサイドになったという感じですね。1番(ポイントガード)、2番(シューティングガード)、3番(スモールフォワード)のどこかに外国人選手を置いていましたが、日本人選手にすることで機動力が出てくるとも思っています。古川、朝山選手で出場時間をシェアしていたのですが、今シーズンは彼がメインで出場出来ます。抜けた選手もいますが、大宮選手(リンク栃木ブレックスより移籍)も入ってきましたし、新人で橋本選手も来ました。確かに彼らがチームに慣れるまではというのもありますが、上手くまわせれば面白いチームになるなという手応えを感じています。
昨シーズンよりも確実に強いです。
―警戒しているチームは?
(長く考えて)警戒しているというよりも、トヨタがどういう風になるのか気になりますね。パナソニックも永山選手が怪我ということらしいですが、金丸選手が入ったことで、どういう風に変化するのか気になりますね。
―パナソニックにはチャールズ・オバノン選手も加入していますね
そうですね。彼も良い選手ですね。(まだ帰化していないが)外国人選手としても良い選手ですから。
―マークしているチームは特にない
そうですね。優勝するためには全チームに勝たなくてはいけませんから。まだ我々に優勝経験も無く優勝も難しいとことであれば、ターゲットになるチームを作る必要もありますけど。選手層の厚い、栃木、トヨタ、パナソニックはどう変化するか気になります。
選手層が厚いというメリットもありますが、同じポジションに沢山いることがどうなるのか非常に気になりますね。我々は無理しないで自然に選手が入り、徐々に増えて行って結果、昨シーズンのメンバーになった訳ですから。なるべくポジションが重ならないよう重ならないようバランス良くやっていたので、同じポジションで複数人がかぶる補強というのはどうなんだろうかと思っています。勿論、新人は別です。引退、怪我でプレー出来なくなる事が想定されますので、活性化の意味で新人補強は行なっていかなくてはと思います。
―では、チームのケミストリーは問題ない?
そうですね。クウォリティという意味では一人ひとりの質を高める必要はあると思いますけど。公輔選手は確かにうちのキーになる選手でしたが、抜けたのであれば、埋め合わせして、他の4人でしっかりカバーしていけばいいだけじゃないですかね。
15点(取る)選手が抜けた穴はみんなで分け合えばいいだけですし、リバウンドが弱くなるのであれば、昨シーズンよりもリバウンドの強い外国人選手を補強していけばいいのかなと。チームとしては大丈夫かな。選手の移籍によって優勝できなくなるとは思っていませんので、多くの人が不安に思われるかもしれませんが、反対にやり甲斐があります。楽しいですね。昨シーズンよりも。練習する度にケミストリーが良くなっていくのが分かりますし、本当に楽しみですね。
―この4年で一番楽しい?
そうですね。一番楽しいです。選手たちもチームもどんどん変化してくのが分かりますね。
―(鈴木貴美一HCから反対に質問を受ける)他のチームはうちをどう思っているのでしょうかね?
(筆者)どうですかね。選手層が厚くなったチームがあるので、多くの人がそちらに注目しているのではないでしょうか。戦力的に下に見るチームはないと思いますが。
―試合は40分で行われるし、NBAのようにシーズンが長い訳ではないので、そんなに多くの選手層は必要ない?
8人、9人くらいの選手で回すことが出来ればいいと思いますね。うちの場合は走りまくるバスケではないので、そんなに(沢山の選手が)いなくても良いチームです。昨シーズンまでは少し選手があまり気味だったかなと感じていましたので。
―新しい選手が馴染むのは時間がかかりますか?
そうですね。橋本、大宮選手は勿論良い選手ですが、うちのバスケットを完全にわかっているだろうと思って使うとミスする可能性があります。そういうミスやリスクも起きると理解した上で起用していかないと。昨シーズンからいた選手は私がやろうとしていることを理解しています。戦術的なミスは少ないのですが、新しい選手はこちらが予想もしないようなミスを犯してしまうことがありますね。それで一度ダメだというふうに思ってしまうと使われなくなってしまいます。昨シーズンはそういった場合に新加入の選手に教えている余裕が無かった。コートに居る選手、使える選手だけに教え込んでいかなくてはならなかったし、昨シーズンまではベンチで使えるメンバーに交代さえしてしまえば良かったのです。
今シーズンは君がやるしかない、君しかコートに立てる選手はいないと教えこんでいますが、きちんと出来るようになっていますね。高島(一貴)選手とかね。きっかけで変わるんだなと。彼なんかは昨シーズンよりも出番は増えると思いますね。
―現段階のチームの完成度は?
かなり高いです。あとはコンディショニングや外国人選手が日本のバスケやオフィシャルに慣れることです。
去年に比べても今年はいいなと私は思います。細かく言えばいっぱいありますけど、今シーズンはいいなと。
本当はやってみないと分からないという言葉を出したいのですが、今年はやれると思いますね。
毎シーズン優勝して当たり前、当たり前と思われてきましたが、今シーズンは多くの人が優勝は難しいと思っているので楽しみです。他のチームは油断してくれないかな(笑)
―目指すバスケスタイルは?
負けないバスケ。私が考えているスタイルは勝つのではなく負けないということです。負けないバスケをどうやっていくのかでレギュラーシーズンの勝ち星が多くなっていきますから。私自身はバスケットのスタイルに非常にこだわりがあります。
―そのスタイルはアイシンでなくても、明日から急遽高校生を教えることになっても変わらない?
そうですね。高校生だと練習方法が変わるかもしれませんが、目指すことは変わりません。プロになったら一生懸命練習する、自主的に練習するのは当たり前な話です。それをやらないからやらせるのは変な話だと思います。やらされている時は上手くならない。主体性をもってやるというふうに仕向ければ、その選手への教育は上手くいっているという考えです。私自身も今日は嫌だなと思っていたときは上手くなりませんでした。自分でやらなくてはいけないと思った時に上達しましたし、嫌だと思うと壁が出来てスランプに陥ってしまいましたから。放任過ぎても管理し過ぎてもダメです。
―今シーズン期待しています
はい。ありがとうございます。頑張ります。勝ったら嬉しいだろうなぁ(笑)