秋田ノーザンハピネッツ、ペップHCのバスケットとは何であったのか?

秋田ノーザンハピネッツは2019年04月27日にジョゼップ・クラロス・カナルスHC(以降、ペップHCと表記)との契約満了を発表した。
個人的には驚きと共にまだ完成しないシステムはどのようになっていったのかを想像したかった。

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ペップHCが秋田で残した戦績は以下となる。
B2 2017-18シーズン54勝06敗(勝率90.0%)
B1 2018-19シーズン17勝43敗(勝率28.3%)

B2に降格した秋田にもたらしたのはハーフコートのみならずオールコートでも追いかける激しいディフェンスであった。
昨シーズン、中山拓哉選手にペップHCのバスケについて聞いた時「アグレッシブにディフェンスして簡単なシュートに持ち込む」と評していたことが印象的で「日本ではあまりないスタイルで最初は戸惑った」とも話をしてくれた。また「ディフェンスにおいてペップにはポジションという概念がない」とも。

今シーズン前田顕蔵ACにインタビューした際も「アグレッシブで激しいディフェンスから」と評していた。「どのチームよりも高いラインを作ってボールに対してプレッシャーをかけていく。自分の中で腑に落ちているのはペップがスペイン人ということもあるが、世界中の国々で経験していてスタンダード(基準、標準)が高いこと。それはフィジカルレベルであったりインテンシティ(激しさ)の度合いが高い」とも語ってくれた。

ペップHCのの源流はどこにあるのかという問いに前田ACは「ペップとその話をしたことがあるが、育ったカタルーニャのバスケがフルコートだった。子供のときからそういうスタイルでやっていてので、自分のDNAになっていると聞いた」と教えてくれた。2018年2月の試合で配布されたマッチデイプログラムの特集でもペップHCのロングインタビューがあり、その中に自身の「原点」が記載されていたこと記憶している。

前田ACは「秋田にとっては非常に良いバスケットなのかなと思う。ヨーロッパのバスケを見たときに激しくプレイしている。代表活動に参加している時もフィジカルレベルは非常に激しいので、日本人が求めるバスケでいうと正しい方向性なのではないかと思う」とディフェンスからのチーム改革が浸透していることを伝えてくれた。
秋田といえばかつての能代工業高校がゾーンプレスから幾度となく優勝したこともあり、見る側(ブースター)にも馴染み深いものだったのかもしれない。

前田ACにシャカ・スマート(Shaka Smart 現テキサス大学ヘッドコート)の『HAVOC』というマインドをもとに激しいプレスするバスケに近いのではないかと問うてみたが「(ヨーロッパやアメリカなどのハイブリッドで)色々なことが混ざり合っている。アメリカの大学でも教えていたし、様々ん国で経験する中で作り上げてきたものだと思う。特にアメリカだけという感じはしないし、(教え方に)聞いたことのないコンセプトが入っているのでペップのオリジナルな印象を受けた」とシャカ・スマートとは異なる概念だと否定された。

この2シーズンでディフェンスのコンセプトを十分感じ取ることができた。それだけにペップHCが作り出そうとしていたオフェンスにも興味があったし、その完成形がどのようになっていったのか見届けもしたかった。
残念ながら秋田ではそれを見ることは出来ないが、彼のレガシー(遺産)が引き継がれていくに期待している。