NBLとNBDLの追加質問:新リーグ副本部長兼COOの山谷拓志氏に聞く

1967年からスタートした日本のトップリーグ(実業団リーグ→スーパーリーグ→JBL)は2012-13シーズン、アイシンシーホース優勝でその幕を閉じることとなった。JBLはNBL、JBL2はNBDLへと名称と変更し、組織そのものも大きな変革へと向かっている。
2013年2月から開始されたNBLリーグ概要説明会では新リーグ(NBL)副本部長兼COOの山谷拓志氏が全国各地を飛び回り、ファンに新リーグがどのようなリーグであるのかをプレゼンテーションしている。
3月2日にブレックスアリーナで行われた説明会の取材から生じたNBLに関する疑問とあまり語られていないNBDLについて追加インタビューを試みた。
(取材 定山 敬)

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NBLのサラリーキャップ補足

★ハードキャップなのかソフトキャップなのか⇒違反した場合に罰則があるのか


-アメリカンフットボールに詳しいと思いますので、細かいことは省きますが、NFL(注1)はハードキャップ制度。1円も限度額を超えてはいけない規則だが、今回のNBLはハードキャップなのか。それともNBA(注2)のようにソフトキャップ(上限を超えることが出来る)を採用しているのか?

基本、ハードかソフトかで言いますと、ハードキャップになります。
特に抜け道やラクジュアリータックス(注3)といった制度を設けませんので、バスケ選手が競技者としての対価としてもらう確約された報酬という定義があります。勝利給やボーナスはキャップの中には含まれません。
いわゆる、基本給のみがキャップに換算されますが、その基本給が1円たりとも上限(1億5千万円)から超えてはいけませんよ、という考え方になります。
罰則についてはまだ現在協議中ですが、規則と罰則はセットになりますので、おそらくは多額の罰金のような形を採用すると思います。
監査の方法ですが、お金を出す側(チーム)だけでなく、受け取る側(選手)からの書類も提出してもらうことになります。
正社員であれば、本来規定で副業を禁止されていると思いますが、プロの選手であれば、別のルート、例えばチーム直接ではなく、その親会社などを経由されて支払われることも考えられます。ですから、確定申告の写しなどを証憑(しょうひょう)として提出してもらうなどの監査のしくみを今現在作っているところです。

-そうなると書類の審査に時間がかかり、違反に対する罰則はシーズン終了後に適用させることになるのか?
そうなります。
違反があったと想定し、発覚したのがシーズン終了後の半年後で、その該当選手が引退していた場合をどうするのかという問題が出てくると思いますが、発覚後の次のシーズン、もしくは次の次のシーズンに罰則が適用されることになります。
もちろん、仮に引退した選手であっても、その選手が在籍していたチームに罰則が及ぶことになると思います。

-サラリーキャップの上限は決まっているが、下限(最低ここまでは使いきる)はあるのか?
下限は設けていないですね。現段階では下限を設けることに課題や問題があるという認識はありませんので。

-NBAでは以前、意図的にサラリーを抑制しようとするチームがあり、その罰則として下限を決めたということがあるが?
今後、NBLの中にそういったチームが出てくれば、下限を設けることになるかもしれません。

-正社員の場合は4月入社でリーグの契約が6月1日からになるが、いつの時期からキャップに加算していくのか?
シーズン最初にチーム側から支払報酬計画書のような書類を提出してもらいます。また、正社員であってもリーグと統一契約書を結んでもらいますし、会社としての雇用契約はリーグとしては考えないので、6月1日から翌年の5月31日までの支払われた金額を抽出して、キャップに加算します。

-bjリーグから移籍する千葉ジェッツの場合、契約が6月30日まであると想定されるが、その場合は?
その場合は次シーズンも継続契約をした選手が契約を更新した時点で、6月1日にさかのぼってキャップに加算することになります。

複数年契約の手続き方法と公示の仕方

-複数年契約した選手は何かの形で公表されるのか?
当該者同士(チームと選手)の話なので、公表するかしないかはそのチームと選手の判断に委ねます。もちろんリーグの中で、各チームでその情報は共有することになります。
今までのJBLではシーズン終了後に45日間優先的に交渉できました。いわゆるプロテクトというルールになりますが、新リーグでは5月31日に契約が切れた選手はその時点ですべてフリーエージェント(FA)になります。その時点から各チームが交渉することが可能になります。今後は他のプロスポーツのように複数年契約して、まだ残り1年契約を残したとしても、別のチームへ移籍を希望する場合には残りの契約を買い取って(バイアウトして)、移籍出来ることも想定しています。

レンタル移籍の方法と期限

-今回からレンタル移籍を採用するが、期間、手続き方法はどうなっているのか。また公示されるのか?
来シーズンで言いますと、契約登録締め切りあたる(2014年の)3月27日まではレンタル移籍することが出来ます。今までのJBLの移籍ルールと同じ期間が適用されるということになります。
毎週ごとに移籍することはできません。最短は1ヶ月になります。最低1ヶ月間はレンタル先でプレイしなくてはいけないということです。
報酬ですが、移籍先と移籍元(保有元)の2チーム間で取り決めをしてもらいます。移籍元が全額負担するケースもあれば、受け入れに積極的な移籍先(どうしてもその選手が欲しい場合など)が負担するケースもあります。サラリーキャップについては移籍したチームに加算されることになります。
公示については2チーム間の交渉が終了し、手続きが完了した時点でリーグから発表することになります。

-レンタル移籍はNBLのチーム間のみか?
NBLからNBDL、またNBDLからNBLへのレンタル移籍も可能です。

新人選手の契約について

-正社員でない場合、つまりプロを目指す選手(大学生or高校生)は3月卒業後から次のリーグが始まるまで空白期間が出来るが、その空白期間の穴埋めはどうするのか?
各チームの判断になると思いますが、いわゆるアーリーエントリーは可能となります。
例えば、卒業後に契約が合意しているチームと、オールジャパン決勝翌日から契約することが出来ます。学連の登録を抹消してリーグの登録をすれば、プレイ可能ということです。

-以前、新人のサラリーに上限を設けていたが、NBLも上限を設定するのか?
JBLでは新人の上限を800万円と設定していましたが、NBLでは新人の上限は設けていません。トータル1億5千万というサラリーキャップがあるので、その中でやりくりしてもらうことになります。

-新人のサラリーが突出しても構わないのか?
構わないですね。即代表入り出来るような地元選手が出現し、新興のチームが戦略的に高額で契約したいということになったとして、その選手に何千万で契約しても構わないということです。大学の方から最低年俸を決めて欲しいという要望はきていますが、現段階では難しいという回答をしています。

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注1)=ナショナル・フットボール・リーグ(英語: National Football League)の略。プロアメリカンフットボールリーグの総称
注2)=ナショナル・バスケットボール・アソシエーション(英語:National Basketball Association)の略。北米のプロバスケットボールリーグの総称
注3)=贅沢税。チームのサラリー総額が一定の基準を超えると罰金が適用される罰則。

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