埼玉ブロンコス、ジョン・フラワーズの意外な悩み。オフェンス面で躍進を遂げるのか。

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(文=西本 匡吾)

 bjリーグ・埼玉ブロンコスに所属するジョン・フラワーズは、プロ入り後、自身のシュートに対して悩みを抱えている。横浜ビー・コルセアーズをホームに迎えた開幕2連戦では、連日、チームトップとなる22点、25点を叩き出したにもかかわらず、である。

 実を言えば、昨年まで過ごしたウェストバージアニ大学では、ディフェンスに重きを置いたプレーヤーであった。2009-10シーズンは38試合中32試合がベンチからの出場だったが、チーム3位となる29個のブロックショットでNCAAトーナメント・ファイナル4への進出に貢献した。ちなみに、2010-11シーズン途中まで大分ヒートデビルズに所属していたウェリントン・スミスは、フラワーズの先輩であり、共にウェストバージニア大学でファイナル4に輝いた選手である。

 学年が上がった2010-11シーズンは、全33試合にスターティングで出場を果たす。74個のブロックショットはチームで最も多く、205個のリバウンドは2番目の成績だった。2011年にはディフェンシブな選手のオール・アメリカ、Lefty Driesell Defensive All-America Teamに選出される。大学時代はリバウンドやブロックショットといったディフェンスの仕事が主であった。

 持ち前のデイフェンスはbjリーグでも十分に発揮されている。

 200cmの身長ながら、フォワードだけでなくセンターのポジションも十分にこなす。埼玉ブロンコスには213cmのゲイブリエル・ヒューズがいるが、203cmのジェレミー・ミラーが負傷中というこもあり、戦術上、フラワーズがセンターとして出場する時間は少なくない。

 ただ、幸か不幸か、ウェストバージニア大学のボブ・ハギンズHCは日本で言うところの「鬼コーチ」であり、フラワーズに対して「センブンフッターのつもりで当たっていけ!」と指導していたという。セブンフッターとは、213cm以上の選手をさす。

「彼の指導を受けていたので、ポジションは関係ないです」

 ブロックショットの数も開幕2試合を終えて、6個と十分な結果を残した。

 しかし、オフェンスでの仕事には成果とは別に、戸惑いがある。

「できるものであれば、もう少しアジャストして、調整していきたいです。あまりにもシュートを打ちすぎているのではないかと思います。特に3ポイントから淡白に打っているところが嫌で。もう少しちゃんとセットし、打つべきタイミングで打って、得点を取るというハーフコートオフェンスをしっかりとしていきたいです。チームの一員として、ポイントを稼ぐような選手になりたい」

 大学時代、オフェンス面での役割はほとんどなく、シュートを打つためのフォーメションに入っていなかった。ただ、それはオフェンスが目を瞑りたくなるほど不得意だったわけではなく、フラワーズより得点能力に優れた選手がいた、という解釈が適当である。

 埼玉ブロンコスでは得点源としての役割が求められているが、ディフェシブなプレーヤーとして過ごしてきた時間が長い分、オフェンス感覚にこびり付いた錆はまだ落としきれていない。開幕2連戦での3Pシュートの確率は2試合合計で15本中3本、確率は20%である。昨年打った3Pシュートの数が65本なので、わずか2試合で昨年の約4分1を打つこととなった。得点は十分に決めているものの、3Pシュートを打つことやとやシステム中での攻撃的な役割にまだフィットしていないのだろう。

 通訳である鈴木祐一は、言葉を訳す際、フラワーズの言葉に補足を加えてくれた。

「他のチームメイトからは、もっとシュートを打てと言われて。彼は、(埼玉での)最初の試合はほとんどシュートを打っていない。プレシーズンでも、入間と飯能で行われた試合は違ったと思います。飯能ではバカみたいに(シュートを)打って、全部入った。大学時代のプレーというのは、シュートをする役割というより、スクリーンなどの露払い役がすごく多くて。彼はアウトサイドのシュートには自信を持っていますが、ここ2試合はあまり入っていない。そこの部分は彼の悩みどころであるかもしれません」

 10月16日の試合の第4クォーターでは、ポイントガードであるケニー・サターフィールドからボールを渡されたものの、すかさず返してしまう場面があった。ボールを返されたサターフィールドは険しい顔をしながら、再度、フラワーズにパスをした。おそらくは、「攻めろ」と意味を込めて送ったパスが、瞬時に返ってきたからだろう。
 味方がピンチになったとき、得点がほしいときに点を取ること。
 フラワーズにはプロになり新しい役割を与えられることになった。

「今までは『シュートが入ったらラッキー』という感覚もあったのですが、今はシュートをしてもらいたいという期待もあり、システムの中でどこからでもシュートにいけるポジションにいます。今まで、自分としてはシュートが入らなかった、というのではなくて、そのチャンスがなかっただけなので。シュートを入れることもできるので、それを証明したいと思います」

 彼は口に出さなかったが、チームの練習後には30分ほど自主練習を行っている。
 鈴木は言う。

「僕はbjリーグを数チーム見てきましたけど、練習終わった後に、1人でシューティング練習するのは彼が始めてですね」

 ジョン・フラワーズのさらなる躍進は、そう遠くない気がする。