11月26日(土) 秋田県立体育館で行われた秋田ノーザンハピネッツ―浜松・東三河フェニックスの試合後インタビュー。浜松:河合竜児HC。秋田:中村和雄HC、カーティス・テリー、信平優希選手。
(文=宮川 紀元)
浜松・東三河フェニックス
河合竜児HC
―今日の試合の総括
まず、こういったスコアでしたが、勝ててほっとしています。今シーズン始まってから、今日は本当に特別な日だったので、これまでの試合とは全く違う心境でしたし、(前夜)眠れませんでした。選手たちも、特別な思いをもって臨んでいました。結果として勝てたということには、満足しています。選手たちも、非常にいい集中力でやっていたので、結果が付いてきたのだと思います。
―勝因はどこにあったと思いますか?
今日は、3ポイントの確率は両チームともまれにみる(高い)確率だったと思います。ただうちが秋田さんと違ったのは、日本人選手を含めて少しずつでもスコアが分散できたことだと思います。リバウンドでは負けているんですよね。そこはターンオーバーの差で差し引きゼロだとして、みんなでスコアできたことが良かったのかなと。
―秋田が司令塔のガーデナーを欠いていたことで、やりやすさはありましたか?
いや、そんなことはないです。31番のカーティス・テリーがいい選手だというのは分かっていました。まだ合流して間もないですが、集中力も半端じゃないですし、あの状態で入れてくるのはさすがだな、と。大学時代の映像を見て、力のある選手だとは分かっていましたが、まさか今日もう力が発揮されるとは。まだ今週はなんとか(好調時のプレーが)こないでほしいなとは思っていたんですけど、いきなり今日からバシャバシャきたので、(読みが)甘かったです。
―今まで長い間一緒にやってきた中村HCを相手にしたやりづらさや、特別な思いは?
カズさんは、僕が何をしてくるかなんてとうに分かっていたと思います。ただ、シュート率というところでその上をいけたので、勝てたのかなと。
カズさんのマッチアップゾーンに関しても、来るとは分かっていたのに対戦してみると想像の上をいっていました。
―第1Qの5分くらいで、かなり大差をつけましたが。
余計怖かったです。競っていれば選手は集中するんですけど、うちは弱いじゃないですか。あんな風に点差がつくと、メンタルの弱さが余計出て、勘違いするじゃないですか。
絶対追い付かれるのは分かっていたので。15点差くらいで第3Qまでもったので、最後何とか凌げたかな、という感じです。
―点差が一桁になって焦りましたか?
いや、焦りはなかったです。今日、選手たちもタッチよかったですし。
―3ポイントを打っていこうという作戦や意識はあったのですか?
ないです。カズさんがいた時や、今日の秋田さんもそうですけど、3ポイントをどんどん狙っていけだとか、そういうシステムを作っているということはないです。そこはやはり僕も弟子なんで、自然にそういう傾向になっています。
―試合前は中村HCと話しましたか?
本当はもっと早く会いたかったです。昨日の練習のときにあっていれば、落ち着くじゃないですか。久々にお会いするんで、すごく緊張があって。朝の練習でもお会いできなくて、ゲームの直前にコートでご挨拶させていただいたときに、「試合も楽しみだけど、まずおまえたちの顔が見たかったから、良かった」とおっしゃっていました。
―さすが中村HC、と思った場面はありましたか?
やはり、選手たちにカズさんのバスケットを徹底させているところです。たぶん、どこのチームも選手の(質や層の)違いってあんまりないと思うんですよ。そういう中で、HCの考えを選手が100%実行できるチームは強いと思うんです。ずっと長いことやっていたので、(秋田は)選手がそんなに変わらなくてもいいチームになるとわかっていました。逆にうちは、たとえ同じ指示でもカズさんがするのと僕がするのでは受け手の感じ方が違うじゃないですか。そこらへん、少しでもカズさんに追いつけるように頑張りたいとは思います。
―師弟対決に臨む心境は?
当然勝ちたいのですが、「あいつ頑張ってるな」と思ってもらいたいです。「こいつアカンわ」と思われたらおしまいだと思っていたので。実際、どういう風に思っていただけたかはわからないですけど。
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秋田ノーザンハピネッツ
中村和雄HC
―今日の試合の総括
やっぱり入り方の問題かな。これはちょっと大きかったかな、と思います。試合前、ロッカールームに入って行ったらちょっとおかしいんだ。トレーナーにマッサージしてもらっている選手もいるし。試合前にマッサージしているのは初めて見た。マイケル(ガーデナー)がいないから、まあいいかという感じがあった。
確かに苦肉の策なんだよ、テリーをポイントガードに使うというのは。長谷川もいないし。ぎりぎりまで、昨日まで迷った。痛み止めを打てば出られるかとも思って、(ガーデナーと)2人で相談したけど、シーズンは長いから、今回は我慢しようということにした。
マイケルのいないハピネッツというのは、考えられない。遅いんだ(展開が)。テリーには相当怒ったけど、まあかわいそうだから。
第1Qの、浜松のシュート率は素晴らしいですよね。敵ながらあっぱれだ。全体的には、この状態でよく追い上げた。信平がよかったから、菊地の出番が少なくなったけど。菊地は、シュートに関しては悪くなかった。信平は、ワルやって坊主にしてきただけあって、ちょっと頑張ってきたかな。バカやったんですよ。だから、まだその程度のチームなんですよ。でも、すごいと思いませんか。髪を短くしたと思ったら、よく見たら赤くなってるんですよ(笑)。なんなんだ、と思うじゃないですか。これはやりがいがあります、鍛えがいがありますねー。
テリーは、アメリカのNCAAのディビジョンⅠのいいところでやってきたわけですよね。だから、なんだ日本のバスケットぐらい、と思って入ってきてる。「見たことか!」って何回もしゃべってやった。生意気なんですよ、大体。ヤンキーで。だから、それを気に入ってるんだ。生意気ならもっと来いよ、って。
スタン(オシッティ)もテリーも、おれはああいうのを「原のホームラン」って言ってるんですよ。9回裏で7-0で負けてる時にホームラン打つような。何にもならない。どこで打つかが大事でしょ。(相手の)アーノルドにしても、ディクソンにしても、ジェフ(パーマー)にしても、「ここ」というときに決めていくのがチャンピオンなんだ。これがやはり(浜松の)いいところなんですよ。だから、このゲームでそういうところを勉強してくれたらな、と思います。
まだこれから。やりがいがあるかな。でも、明日バタバタとあわててマイケルを使うようなことはありません。もうちょっとかかるかな、もしかしたらあと1週間くらい。
マイケルとリッキー・ウッズ(のコンビ)ってのは絶対に強いってのはわかってるんですよ。本当に暴れん坊だから。あとは、残りの3人の外国人プレイヤーがもう少し奮発してくれればいいかな、と思います。日本人は、少しずつ成長しているような気がするんですよ。ゲームの度にちょっとずつ。
何べんも言うけど、浜松のシュート力は非常に素晴らしかった。マイケルがハーフタイムに「あの頑張りはすごいよ!」って言ったくらいだから。
―師弟対決のやりづらさとかはありました?
ないですね。去年宮崎のHCもそうだし。あいつらに会うのが楽しみで。直前に、(太田)敦也のところからミカンが来るわ、大口のところからリンゴは来るわカキは来るわで。なんだこれは、っていうくらい。いい関係なんですよ。今日も試合前、(浜松から駆け付けた)ブースターにあいさつしたんですよ。
―河合HCの指揮はどう映りましたか?
河合竜児がどうというのはあまりないですね。「ああ、竜児がやってるんだった」ってぐらいの感じです。
大口は「中村さんの目の前で3ポイントを入れる」ってほざいていたけど、おれの前では決めなかった(笑)。
それから、敦也は今殴ってきたんですよ。アホみたいじゃないですか、今日の敦也のバスケットはね。あれはダメ、あんな感じでバスケットやっちゃダメですよ(笑)。0点、5ファウルなんて。(叱咤していたら)大口が喜んでるんですよ、「やれやれ」って(笑)。
―明日もガーデナーがいない中で激しい試合になると思いますが。
激しくなってくれればいいんだけどね。水町をポイントガードに使って、テリーを2番、3番で(シューティングガード、スモールフォワード)で使うことも考える。でも、菊地と庄司も捨てがたいわけですよ。
―相手の作戦で、驚いたところはありましたか?
今日は、相当想定内だったんですよ。1番(ラミザナ)のシュートを除いては。入った試しがないんだよ、今まで。今までの試合、全部、全部、打ってもいないんだよ、シュートを。EJ(ドレイトン)も昔一緒にプレーしてたけど、「まったくシュートはない」って言ってたんだ。だから信用した。そしたらまあ…。あれが計算外だったなあ。あの分の点数がちょっと多かった。あれでギブアップしたなあ。
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カーティス・テリー選手
―今日のゲームを振り返っていかがですか?
ゲームの入り方がよくなかったです。シュートを決められるところで決められなかったです。一方で、浜松の選手はどんどんシュートを決めていたので、賞賛に値すると思います。
―ポイントガードとしては、どうでしたか?
とにかく、やれと言われたことをやるのがバスケットプレイヤーです。明日はもっと精度を上げて、チームとしてまとまって勝ちたいと思います。
人間としても、選手としても反省することはたくさんあります。明日また試合があるというのは、とてもいいことだと思います。なぜなら、明日こそ汚名返上できると思っているからです。
―新しいチームはどうですか?
選手も、コーチングスタッフも、運営会社自体も、とてもいい環境で溶け込みやすかったです。今回初めてホームゲームをして、秋田のファンの素晴らしさを身をもって感じました。明日はファンのためにも、もっといいプレーをして勝ちたいと思います。
―来日して間もないですが、チームにはどれぐらいフィットしていると思いますか?
今夜(の試合前)までは、100%だったと思います。さっき言った通りに、ハピネッツの環境は最高です。勝つことができなかったのには悔いが残ります。明日こそは頑張りたいです。
―今まで色々なコーチのもとでプレーしてきたと思うのですが、中村HCは今までのコーチと違いますか?
どのコーチに関しても、同じコーチは一人もいません。ただ、カズさんの場合は勝っている経験があるので、カズさんの下でしっかりと学んでいきたいです。
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信平優希選手
―キャリアハイの16点を挙げましたが、それを踏まえて今日のゲームはどうでしたか?
まあ得点というか、自分の仕事をしっかりやろうと思っていたので。仕事はできてたんですけど、まあディフェンスで34番(アーノルド)にもっと詰めて守れば、点数は半減したんじゃないかな、と。そこは悔いが残っています。でも個人的にはミスが少なかったと思うので、そこはよかったかな、と。
―ウェイン・アーノルドはやはりすごいプレイヤーですか?
なんていうんですかね、独特の感覚があって。詰めればパワーでやられて、離せば打たれるんで。その微妙な駆け引きがうまかったので、ダブルチームとかでもっと早く抑えれればよかったです。後半乗ってきたので。
―今回はミスが少なかったとおっしゃっていましたが、今までのどんなところを反省していました?
まずリングを見ずにパスばっかり狙っちゃって、消極的だったので、パスカットを狙われたり。
今日はドライブとかもできたので、明日も一生懸命やりたいです。
―今までと何が変わったのですか?
特に変わってはいないと思うんですけど、浜松に勝ちたいというのがあったので。アドレナリンじゃないですけど。
負けてしまったんですけど、明日につながる試合だと思います。
今まであまり打っていなかったんですけど、やっぱり打つことで次のプレイも生まれるかな、と思いました。
―チームとしてはガーデナーが不在で、テリーがポイントガードをやっていますが、どんな感じですか?
試合をやるのは初めてですけど、パスはよく回ってたんですよ。でもやっぱりディフェンスの面でアーノルドにやられすぎたかな。あとは、9番(ディクソン)にもドライブから捌かれたり決められたりしたので。カバーのカバーまでしっかりして、周りを見れば止められたんじゃないかと思います。
―明日のゲームに向けて
今日は序盤から相手の外国人選手を乗らせてしまったので、そこを止めたいです。出だしを集中してやっていきたいな、という感じです。