サンロッカーズ渋谷、新たなる「文化」の融合

28試合を消化してサンロッカーズ渋谷は19勝9敗(勝率67.9%)。新年明けの横浜ビー・コルセアーズ戦を2連勝し、2試合ともに20点以上の得点差をつけた。今シーズンは7選手(石井講祐、渡辺竜之佑、野口大介、関野剛平、田渡修人、チャールズ・ジャクソン、セバスチャン・サイズ) が新たに加わり昨シーズンとは全く異なるチームになった。

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オールコートからプレッシャー、ショウ・ディフェンス、タイムシェアは今シーズンのから大きく変更された部分だ。

昨シーズン途中から指揮する伊佐勉ヘッドコーチ(以降、伊佐HC)は守備を強調している。1月4日の試合後の会見でも開口一番「ディフェンスに関しては満足のいくプレッシャーをかけることができた」と守備についてはなす。

オールコートからプレッシャーやショウ・ディフェンスはアシスタントコーチでもある浜中謙(以降、浜中AC)氏がウエストバージニア大学(以降、WVU)出身ということもあり、名将ボブ・ハギンズ(https://en.wikipedia.org/wiki/Bob_Huggins)仕込みなのかと想像していたが、答えは大きく異なった。
浜中ACが在籍した時のWVUはターンオーバーを誘発するオールコートからの守備は採用していなかった。「あのスタイルを実行するのは見合うタレントがいないと難しい。アルバルク東京にいるケビン・ジョーンズ選手は同級生で、彼のときはフルスイッチするスタイルだったが、想像されるWVUのフルコートプレスと現在、サンロッカーズが採用しているスタイルは直結しない」と説明してくれた。

「全選手が最初からエネルギーを出してディフェンスし、相手よりもアグレッシブにプレイできるのかを考えた結果がフルコートでのプレッシャーというプレイスタイル。自分が出したアイデアとして採用されたのは昨シーズンまで秋田ノーザンハピネッツで指揮をとっていたコーチ・ペップ(ジョゼップ・クラロス・カナルス)のスタイル」だという。
ペップと浜中ACの接点は2016年のbjリーグ時代のライジング福岡(現ライジングゼファーフクオカ)。わずか半年間だったが非常に影響を受けたと浜中ACは述懐する。
「コーチ・ペップは私が知り合う以前からあのスタイルを貫いていて、確固たる哲学を持っている。彼の哲学と伊佐やサンロッカーズの良さを融合している」

ペップと伊佐HCの共通点については「『チームバスケット』。彼らにとってのチームバスケットは何かというと出場時間に差はあれどベンチにいるメンバー含め12人全員がチームであり、選手だけでなくスタッフも含めチームであると。12人全員でチームが結成されている。要所要所で選手が良いプレイができるように起用していくタイムシェア。その根本がふたりには共通している」

コンセプトに揺るぎがないのは会見後の選手たちが守備について口々にする場面からも実感できる。

ライアン・ケリー選手に今シーズンのスタイルについて聞いたみたが、「このスタイルは気に入っている。コートに立つ5人が相手にとって脅威になる武器を持っている。速い展開から攻める。守備はプレッシャーをかけ、ターンオーバーを誘い、得点差をつけることができている」

山内盛久選手は「ディフェンスからアグレッシブにプレイし、速い展開にもっていくのが今シーズンのサンロッカーズのバスケ。守備がソフトになると相手のペースになるので、その部分はチームで共有し口が酸っぱくなるほど強調している」

また関野剛平選手も自身の役割について「どのメンバーで出場してもディフェンスする。どれだけ得点差あっても関係なくディフェンスはしていきたい」と語るようにディフェンスが根底にあることがわかる。

攻撃面で興味深い部分のは得点の割合分布だ。
下記は1月4日、5日の試合の割合。
『その他』というのはフリースローエリア(ペイント)から3ポイントライン未満のいわゆる中距離(ミドルレンジ)と言われる部分。

サンロッカーズ渋谷得点分布

日付 合計 3ポイント ペイントエリア フリースロー その他
1月4日 87点 21点 40点 24点 2点
1月5日 91点 36点 34点 15点 6点

昨今NBAではミドルレンジからのシュートを打たず、確率と効率の良いペイントをスリーポイントからの得点が増やす傾向がある。
サンロッカーズもそのスタイルを採用しているのか浜中ACに聞いたみたが「スタッツを聞いて初めて気付いた。意識は全くなく結果的に確率の高いところで得点を取ることができている」と戦術的な意図ではないことを強調する。
「伊佐の良さでもあると思うが、選手に対してしてはいけないとは絶対に言わない。選手から見ると思考というかオプションを一つ潰されたということはならないと思う」とクリエイティブな部分は選手を信頼している。

今シーズンの完成度について浜中ACは「プレシーズン、シーズン当初と比べても非常に前進している。バスケの面だけではなくサンロッカーズの文化も少しずつ良い意味で変わってきていると思う。ハードワークを大前提としてバスケットを展開できている。多くの人が思い描くサンロッカーズのイメージを良い意味で驚かすことができている。伊佐を含め4人のコーチ陣でインテンシティを保つサンロッカーズ・スタイルを構築しているところだ」と語った。

旧来のサンロッカーズと新しいサンロッカーズが融合し、大きな目標に向かっていく。
(文 定山敬)