bjリーグプレイオフ イースタンセミファイナル 新潟vs秋田戦 衛藤晃平氏によるプレビューとゲーム1の解説

5月7日に、バスナビのゲスト解説として元富山グラウジーズHCの衛藤晃平氏を会場にお招きしました。残念ながら5/7(土)のみの参加となりましたが、イースタンカンファレンスセミファイナル、新潟アルビレックスBB vs 秋田ノーザンハピネッツ戦のシリーズ予想、及び5/7の第1戦(新潟75-72秋田)について解説をお願いしました。わたくし荒木との対談形式のコメントを文章に起こし再構成してあります。対談形式という事で内容が前後する部分もあることをご了承ください。

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新潟vs秋田戦 シリーズプレビュー

-ではまずこのシリーズについて、どのような展開になりそうでしょうか?
「まず、重いスタートになると思います。マッチアップがズレているというのもありますし(※新潟はオンザコート2が予想されていました)、お互いに探り探りでやるのではないかと思います。」

-そのミスマッチについて、新潟にとっていい展開で考えるならば、アシュビー、リーチのツインタワーでリバウンドを取って早い展開を仕掛ける、しかしこのトランジションの戦いは秋田にとっても望む戦い方ではないでしょうか?
「ただアップテンポの展開になったら、新潟は後手になると思います。新潟はトランジションでの展開をやりたがりますが、結局トランジションで攻撃回数が増えると、後手を踏む傾向が強くなります(ここまでのシーズン、新潟は1試合での攻撃回数が80回を超えるとほぼ負けており、それ以下では勝ち試合が多くなります。チームの攻撃回数は「2ptの決定数+3ptの決定数+FTの2投目の成功数+ディフェンスリバウンド数+相手のTO数」で算出できます)。それは新潟がチームバスケットに意識が行っているせいで、目の前の焦点がボケている事があるからです。なので、トランジションから45度に(ボールが)回ってポーンと打つ、これは多分ないと思います。」

-では逆に秋田がその展開になれば?
「イケイケドンドンになると思います。マッチアップがズレて秋田の選手がガツガツ攻めてきた時に、新潟の選手が冷静にディフェンスを終えてオフェンスをしっかり作れば、自ずと新潟に流れが行くと思います。」

-すると、基本的には両チームともどれだけしっかりディフェンスを守ってリバウンドを奪えるかという事ですね?
「そうですね。」

-そのリバウンドでは、新潟には秋田が初めて対戦するアシュビー、リーチのツインタワーがいるので、彼らがどれだけオフェンスリバウンドに絡むか、これが新潟が望み、秋田が避けたいパターンという事でしょうか?
「そうなります。秋田に関しては、シュートを決めた後にガードにプレッシャーを掛けにいけば、秋田の勝利の可能性が高くなると思います。(ディフェンスが)いきなり下がってハーフコートで守るのではなくて、シュートを決めた後に澤岻選手にちょっかいを出せに行くことですね。そうすればトランジションで戦うことが出来ます。水町選手、信平選手がトランジションでハッスルすることが、秋田にとって重要になります。」

-選手のマッチアップに関してはミスマッチが想定されますが、どのような展開が予想されますか?
「グレイブス選手に関しては生で見ていないのですが、たぶんどっちもどっち、お互いにオフェンスのイニシアチブを取ると思います。インサイドの新潟、アウトサイドの秋田という事で間違いありあません。ドクンとビュートラックがスマートにプレーすれば秋田でしょう。」

-一方の秋田は、ヘンリーとグレイブスという突破力も決定力もあるG/Fの選手を並べられるのが強みであり、新潟にとってのネックになりますね。
「そうです。ただ、その時の為に廣瀬HCは準備されているだろうし、マッチアップゾーンをしっかり組んでくると思います。」

-そのゾーンでは、秋田のインサイドを封じてアウトサイドを打たせ、リバウンドを確保するということでしょうか?
「もしくはペネトレイトをわざとさせる可能性もありますね。新潟はブロックがあるので。セックはアシストがありますけど、グレイブスに関してはフィニッシュまで来ると思います、タフショットで。彼は(パスを)捌くタイプではないので。そのセカンドチャンスを(秋田に)与えなければ、新潟はいけると思います。セックの場合は基本的に左手なので、ゾーンディフェンスでのディレクションはやり易くなると思います。」

-続いて日本人選手について、新潟で鍵になりそうな選手は?
「澤岻選手ひとりですね。ゲームをしっかりコントロールすることが重要になるので、そこで彼がしっかりコントロールする時間帯と仕掛ける時間帯、これを彼自身の中でコントロール出来れば、新潟のペースになると思います。池田選手に関してはいつも状況に関わらず同じようなスタッツを残す選手ですからね。

ただ、秋田では庄司選手がいい仕事をするんです。外国人でのミスマッチもありますけど、庄司選手のディフェンスをどうするか。新潟の3選手、池田、根東、小松ですね。庄司選手はポストアップも出来るし、しっかりアウトサイドも決めてきますから。富山でも、庄司選手が外国人選手相手にディフェンスをしてイニシアチブを取られたという事がありました。」

-秋田の他の選手については?
「北向選手が思ったよりアテンプトを持っていて、どんどん積極的に打っている印象があるので、これがどう転がるかですね。」

-北向選手は自分でクリエイトするというより、チームでシュートチャンスを作るタイプですね。
「そうですね、セックのペネトレイトで彼がフリーになると思います。ただ、埼玉の時以上に積極性を感じるので、面白い存在だと思います。」

-秋田では、長谷川選手を避けて通れないと思います。
「どうでしょう、出るんでしょうか。チームバランスの為に出ないという事もある選手ですので。ただ、出たら出たで絶対に仕事をするタイプですし、たぶん第2Qで出て来ると思います。そこで、澤岻選手が長谷川選手のプレッシャーに対してどうマッチアップするか、これは楽しみですね。」

-水町選手については?
「澤口選手らがカバーでいますので、水町選手が澤岻選手にプレッシャーを掛けていけば、秋田のペースになると思います。」

-他に信平、澤口、菊地選手については?
「信平選手はゾーンでは凄く戦力になる選手です。瞬発力があるので、彼のディフェンスエリアというのは大学時代から秀でたものがありました。あとは高校時代に培ったものもあるでしょうし。オフェンス面は計算できないですが、ディフェンスに関しては、結構やっかいな物を持ってますね。」

-それではシリーズ全体の話になりますが、衛藤さんのイメージはどうですか?
「今日、新潟が勝ったら、新潟が2-0で行くと思います。秋田が勝つには1勝1敗で第3戦ですね。やはりメンタリティの部分も入ってきますけど、1つ取ることでゲームコントロールをしやすくなりますからね。」

-そのゲームコントロールについて、新潟はゲームコントロールすれば勝てる、逆に言えば出来なければ勝てないという事ですが、これがトランジションゲームになると、秋田が有利になるということですね。
「そうですね、トランジションが多い展開になると、秋田が有利になると思います。」

-すると、秋田はゲームの序盤からトランジションを激しく、ディフェンスを当たってくるでしょうか?
「そう行きたいのではないかと思います。新潟はプレイオフ経験者が多いです、外国人選手も。イッサもベテランですし。ただ秋田はレギュラーシーズンを見ていると、早い展開も得手不得手があって、どちらとも言えない、必ずしも早い展開がいいとは言えないんです。ただ新潟に関しては、早い展開だと後手になるので、それを関連付けると、新潟はアップテンポにするよりコントロールして、という事ですね。新潟に関しては、ジュリアスとリーチがどう噛み合うかですね。」

-第2Qが鍵になりそうという話がありましたが
「まず新潟がマッチアップゾーンを仕掛けるだろうという予想は出来ます。これに対して秋田の選手がどう対応するか。新潟は第2Qに齋藤、小松、根東が頑張りますからね。

秋田は第2Qにセックとグレイブスを一緒には使えないんですよ。ビッグマンが1枚入ると思うので。その時に(ディフェンスを)割っていけるのはどちらか1人になるので、秋田はそこに長谷川選手がどう絡むか。秋田は第2Qのイメージはしにくいと思うのですが、新潟はずっと(第2Qの戦い方が)変わってないですからね。そこで廣瀬HCが奇策を出してくるのか?というのはありますけど、基本的には、新潟のマッチアップゾーンに対して秋田がどう出てくるか、ですね。秋田のゾーンもいいですけど。しっかり固めてきますからね。

それしても、今回はこれが一番面白いカーディングだと思うんですよ。秋田の選手と新潟との関係という背景もありますけど、それ以外にも、プレースタイルの違う選手が対戦しますし、マッチアップのズレもありますし、チームの目指すスタイルも違います。特にプレイオフではメンタリティというものが相当影響してくると思うのですが、そこで澤岻選手、池田選手、アシュビー選手、リーチ選手とプレイオフを経験している選手たち、そして根東選手、イッサ選手はベテランですが、これに対して若い選手中心の秋田、そこを長谷川選手、庄司選手がどうまとめるか。全く別のスタイルのチームの対戦なので、ファンとしては予想するのが難しいと思います。1対1×5ではないバスケットの妙技を考えると、非常に面白いゲームになると思います。一発勝負ですからね。面白いと思いますよ、この対戦は。他の地区はある程度予想できますけどね。」

-それではまとめですが、改めてこのシリーズの予想は?
「2-0で新潟ですね。新潟が有明に行くと。」

-ありがとうございました。

ゲーム1(5/7)解説

新潟アルビレックスBB vs 秋田ノーザンハピネッツ@新潟市鳥屋野総合体育館(2011.5.7)

新潟-秋田
第1Q 21-16
第2Q 12-13
第3Q 21-27
第4Q 21-16
最終スコア75-72

【スタート】
新潟:#1澤岻、#15根東、#32池田、#25アシュビー、#3リーチ
秋田:#2水町、#22ヘンリー、#10庄司、#9グレイブス、#5アキングバデ

【レフリー】
#4漆間、#14地頭薗、#42GONZO

【観客者数】
1,838人

【主な個人スタッツ】
新潟:リーチ19pts、FG9/12、8reb、アシュビー16pts、FG8/16、7reb、アンドリュース9pts、FG4/5、コナーレ8pts、2pt4/6、5reb、2ast、小松8pts、池田5pts、3reb、澤岻5reb、3ast、3TO
秋田:ヘンリー14pts、FG6/14、ビュートラック13pts、FG5/7、6reb、グレイブス10pts、FG4/14、14reb、北向10pts、FG4/8、アキングバデ10pts、FT4/9、水町6pts、3reb、4ast

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第1Q 新潟21-16秋田

-新潟はマンツーマン、秋田は3-2のゾーンディフェンスでスタートしましたが、お互いに雰囲気に飲まれたのか、重たい立ち上がりでした。
「お互いに探りながらやっている感じがありましたね。新潟にとって、最初の殊勲賞は根東だと思います。最初の3ポイントもそうですが、彼がウィングでボールを早く繋いで、ボールにミートして仕掛けてくれていたので、あれでお客さんの雰囲気も落ち着きを取り戻して、いつもの新潟らしい姿になった印象があります。」

-根東は第1Qで7pts(3pt1/2、2pt1/1、FT2/2とよくボールに絡み、開始直後の速攻でのオフェンスファウルに2TOと、良くも悪くも根東らしいプレーでした。
「根東のプレーで他の4人が落ち着いてプレーできたというのはあると思います。そのあともずっとアタックしていました。やはりキャリアがある分、自分の中で何をするのかというのがクリアになっていたのだと思います。」

-一方の秋田については、シュートまでは行ってますが決めきれない展開が続きました。
「オールコートのトランジションオフェンスについて言えば、セックとグレイブスのどちらがボールを運ぶのか?という部分でディナイされてしまっていたので、オフェンスの入り方が変わってしまいました。グレイブスがもうちょっと動いて、オフボールの時にマークマンを見て動かないとでした。序盤は彼がステイしてしまって、結局シュートを打ってダメ、というパターンがずっと続いていました。この辺は秋田にとってもったいない時間帯だったと思います。」

-秋田はセックの3ポイントや水町のアシストなど好プレーもあったのですが、最後まで流れはつかませんでした。
「秋田としてはどんどん行くしかなかったですね。インサイドに関しては新潟が完勝していたので。」

-第1Qを終えて21-16ですが、試合内容としてはほぼ想定内の流れだったでしょうか?
「そうですね、想像できた展開だったと思います。秋田に関しては3ポイントが入らなかった印象がありますね(秋田の3pt:1/8)。どうやってハーフコートを攻めるのか、どうやってブレイクで攻めるのか、そこがクリアにならなかったのが、このQで後手になった原因だと思います。」

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第2Q 新潟12-13秋田

-第2Qに関しては衛藤氏もキーポイントのひとつに挙げていましたが、オンザコート2を秋田がどう乗り切るか?という部分です。ここで予想通り長谷川選手がコートインします。
「長谷川が入ったことで、グレイブスの玉離れがよくなったんですね。最初にグレイブスが(ボールを)受けるというシチュエーションが無くなって、長谷川がボールを最初に受けることによって、グレイブスがハーフコートバスケットに集中できるようになりました。その方向性がクリアになったことで、秋田はチームとして上手く機能した部分があったと思います。

ディフェンスにしても、長谷川が中間の位置をしっかりとって、新潟のオフェンスでオフボールの選手を1人孤立させるように守っていたので、徐々に秋田のペースになりました。

このQはやはり秋田でしたね。新潟は澤岻がコートに戻って、中間の位置で守っている長谷川相手に1on1からシュートを決めて、なんとか乗り切った感じですね。アシュビーも相当イライラがたまっていたのですが、何とか新潟が(リードを保って)逃げ切ったのかな、と思います。」

-スコア的には12-13と動かないなかで、秋田は長谷川が10minの出場と存在感を発揮しましたが、このQも3ポイントが0/5と決まりませんでした。
「秋田はオフェンスリバウンドを全然有効に使えてないんですよね(秋田の第2Qのオフェンスリバウンドは5、前半で12に対し、新潟は前半で4のみ)。チームで取ってるんですけど、これが点数に繋がらなかった。それをしっかり決めていたら、前半は秋田がリードして終われたと思います。」

-得点差は新潟の33-29とわずか4点ですが、ここまでの重たい展開からも、4点以上の重さがありましたね。
「重たいということは、新潟のペースだったという事なのかなと思います。第2Qは完全に秋田でしたが、トランジション、アップテンポなのは無かったですし。もちろん、3ポイントが1本でも入ればトランジションゲームに変わっていたと思います。」

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第3Q 新潟21-27秋田

後半も立ち上がりは重たい展開です。新潟は後半を3-2のマッチアップゾーンでスタートするのですが、秋田はこれに対してコートインした北向が連続3ポイントを含む活躍を見せます。
「新潟は傾向として試合のどこかでマッチアップゾーンで勝負に来るのですが、前半は使っていませんでした。第3Qは(ゾーンで)来るかな?とは思ってました。その意味では、新潟はそれ(マッチアップゾーン)をひとつの武器として、自分達は何をしなければいけないのか?ということが共通理解として、クリアになっていたと思います。マッチアップゾーンも北向に対しては後手を踏みましたけど、根東か誰かがターンオーバーをしたんですね。あれも結局逆速攻で点数を取れば、もう少しマッチアップも効いていたでしょうし。」

-中盤以降は秋田がトランジションを中心に得点を重ねる場面が目立ちました。
「攻撃回数的にも秋田のペースになりましたね。前半はアウトサイド、3ポイントが決まらなくて、秋田のペースになりきれなかったところで、第3Qで北向が3ポイントを決めたことでゲーム運びが軽くなりました。

ただ、第3Qはトランジションのやり合いの中で、池田選手がいい活躍を見せてたんですよ。前半は根東が45度で(ボールを)受けて、パスで繋いでペネトレイトするというプレーが出ていたのですが、恐らくハーフタイムにコーチ陣から指示が出たのだと思います。

試合の流れは秋田のペースになっていたんですけど、それに対して新潟も整えていたというのも事実です。」

-ここではコナーレ選手のドライブなど、効果的なプレーが見られました。
「彼は徐々に存在感を発揮してましたね。特にプレイオフだからという事ではなくて、彼に求められていることを彼自身もやってました。ずっと彼を見ていたんですけど、第1Qは4分と短いんですけど、4点取って、オフェンスリバウンドも2~3あって、いい形で彼の仕事をこなしていました。ベンチでもずっとストレッチして準備してました。やはりキャリアがある分、しっかりと準備をしていましたね。ゲームが深くなればなるほど、チームが共通理解を持てば持つほど、「いぶし銀」ではないですけど、それが顕著に現れましたね。」

-このQはではリーチ選手が11pts、FG5/6とポストで圧倒的な存在感を発揮しました。
「個人的には予想以上でしたね。リーチの状態が思ったより良かったです。ここまで高確率で決めてくるとは予想していませんでした。

このQの展開自体は秋田でしたけど、第4Qに繋がるという意味での第3Qは、新潟は自分達がやるべきことがクリアになってました。攻撃回数も増えてトランジションも増えて展開的には秋田なんですが、その中でも新潟は自分達をしっかりコントロールして焦ることが無かったです。ハーフコートではリーチに入れて45度からも積極的にアタックしましょう、ディフェンスではマッチアップゾーンで流れが来るまで我慢して、スティールを狙いましょう、と。それがうまく線には繋がらなかったですけど、コートの5人としてはしっかりクリアになっていたと思います。」

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第4Q 新潟21-16秋田

-ここで新潟は初めてオンザコート3を投入し、途中で切り替えた3-2のマッチアップゾーンが秋田をシャットアウトすることになります。
「このQの出だしはイッサでしたね。オフェンスリバウンドを連続で取って、ファウルはもらえなかったですが完全にポジションを取っていました。その後の新潟の得点を演出したのも彼のショットでした(コナーレの3ポイントミスからアシュビーのオフェンスリバウンド)。

そしてグレイブスに対するディフェンスですね。グレイブスで勝負するというのが秋田のバスケットだったと思うんですけど、グレイブスのところでしっかりマッチアップしていました。」

-新潟のタイムアウト後(8:18)、アシュビーのダンクの次にザックの速攻からのダンクが決まりました。
「そこまでの速攻では、アーリーオフェンスで4人目、5人目が入って来ているんですけど、中で仕掛けてなくて、ハイローが出来なかったり、逆サイドへのスキップというのが無かったんです。そしてこの速攻で、この試合初めて5人目のジュリアスにボールが入って、引きつけてからザックに捌いて、コーナー(の選手)もオープンだったんですけどフェイクを使ってザックがダンク。これは非常に効果的でしたね。」

-ここで秋田のタイムアウト(7:27)、しかしこの後に新潟が3-2のマッチアップゾーン、ザックをトップに置いた3-2ですが、これに対して秋田のオフェンスが完全に止まりました。
「ザックが上にいることでトップが無くなるのと、コーナーにボールを落としたときのパスコースが無くなります。それまで(新潟は3-2ゾーンで)日本人3人が上をやっていたのですが、そのイメージがたぶん秋田の選手に残っていたのだと思います。その時は足で動いてごまかしていたのですが、そのイメージが秋田の選手に残像として残っていたので、ボールが回せなくなってしまいました。(ゾーンのトップが)日本人3人の時は、ボールを動かしてディフェンスを動かしていたんですけど、ザックがトップになった途端にピックアンドロールに頼り始めたんですよ。そうなるとスペースがどんどん無くなってしまいますね。」

-攻め手を欠いた秋田はオフェンスが手詰まりとなり、数分間、得点出来ない場面が続きます。ヘンリーのオフェンスファウルはその象徴的なシーンでした。
「完全にフラストレーションでした。」

-一方の新潟は速攻から小松の3ポイント、そしてショットクロックが迫る中、小松がタフショットを決めるなど完全に流れに乗ります。
「あれは気持ちで入れましたね。」

-秋田はバークスの3ポイントでやっと一息つくのですが、完全にリズムをうしなっていました。
「やはり第3Qでしっかりと第4Qに繋げることをやっていた新潟と、目の前のことを一つずつクリアしてきた秋田、そこに新潟の新しい戦術が来て、秋田はそれまで見えていたものが見えなくなりましたね。」

-オフィシャルタイムアウト後(4:53)、点差こそ4点差、3点差と迫るのですが、試合の雰囲気は変わりませんでした。
「新潟の選手たちは余裕がありましたね。秋田は、こうなってしまうとなかなか・・・。新潟にはディフェンスで「これを取ればいけるんだ」という感覚がありました。あそこで秋田が1本、2本と決めれば別ですけど、雰囲気的にもそうではなかったです。」

-終盤には、秋田のグレイブスの気持ちが切れていたそうですね。
「第4Qですね。ベンチの端っこでボケーっと突っ立ってたんですよ。観客席に入って。イッサのディフェンスもあるし、自分のシュートも入らないし。秋田のバスケそのものが個人の感性に任せているところがありますが、(グレイブスは)自分自身も悔しかったんでしょうけど、集中してなかったのは確かですね。」

-試合は結局75-72で新潟が逃げきりましたが、MVPに選ばれたリーチは19ptsというだけでなくFGを9/12と高確率で決め、特に後半だけで15ptsとまさに圧倒的な存在感を発揮しました。
「ハーフコートオフェンスはリーチ、リーチ、リーチで作ろうとして、それを信じてやり続けた新潟の勝利と言えますね。第2Qには1度孤立はしましたけど、終始同じプレーでした。ジュリアスを1回外に出して、斜めカットからのプレーを徹底していたのが、新潟の勝利に繋がったと思います。

-秋田にも十分チャンスのあった展開のように思いますが。
「何とかしないと、という思いが強くなるほど、シュートが入らず、マッチアップゾーンにはまって、気持ち的に切れて、という展開でしたね。やはりジュリアス、リーチというリーグを代表する選手がいるインサイドを攻めるのは、なかなか難しいですよね。

ただ最低限、役割分担ですね。第2Qに長谷川選手がボールを運んできたように、セックがボールを運んできて、グレイブスが45度からハーフコートオフェンスを展開するというのがもう少しクリアになっていれば、試合展開が変わったように思います。5人のセットオフェンスでは何本かいいプレーがあったので。自分達でこれをしよう、といのが明確になれば、チームでバスケをするという事になるので。そこのところが勿体無かった、あと1本という所に繋がらなかったと思います。」

-この状況では秋田にかなりの手詰まり感があるのですが、これを打破するためには?
「まずはマッチアップゾーンをどう攻めるかですね。そこがベースになると思います。オフェンスとディフェンス、どちらから?と言われれば、ディフェンスから変えないと打開策は無いですね。

アウトサイドが強いという事は、トランジションバスケットをすれば勝てるという事です。がっぷり四つになれば、インサイドにいい選手がいるほうが有利というのが定説ですから、ディフェンスでどんどんプッシュしてちょっかい出して、トランジションバスケを仕掛けるのが1つですね。あとリーチに対して、今日は1度もダブルチーム行かなかったので、そこは行ってみても面白いと思います。オフェンスよりも、ディフェンスでちょっかい出してトランジションゲームに持ち込んだほうが、勝機を見いだせると思います。

やはり秋田はチームとして共通理解を持ったほうがいいですね。みんながグレーなところで済ませすぎかな。グレイブスがチームに合流してまだ短いですが、その棲み分けの部分をクリアにすることが最優先かな、と。

その意味では、第2Qに長谷川選手が入ったときはみんな集中してましたか。存在感という意味も含めて。若いチームだからこそ、共通理解を持つことが最優先だと思います。

ただ、オフェンスリバウンドをこれだけ取れているのに(秋田20、新潟12)、それが得点に繋がらないのはまさに富山グラウジーズと一緒ですね(笑)。インサイドのマッチアップでは負けているけど、オフェンスリバウンドは取れているという事ですからね(アシュビー、リーチで35pts、15reb、アキングバデ、ビュートラックで23pts、8reb)。オフェンスリバウンドを取ってFTを20本も貰っているんですから、それを沈めるしかないですね(秋田のFT10/20)。インサイドの選手はこれを決めるだけです。

やはり秋田はこの第1戦を取りたかったと思います。これでシリーズの流れは決まったと思います。やはり新潟はベテランの選手が多いですから、今日のゲームもそうですけど、徐々に第4Qにまとめて来ました。今日ひとつ取った事で、明日は自信を持って入って来ると思います。秋田は開き直っちゃダメですけど、もう1度、今までやってきたことを信じてやるしかないですね。

ただ、今日みたいなゲームはもったいないですね。1対1も中途半端になってましたし、オフェンスチャージを取られるくらいどんどん行かないと。セックもグレイブスも(自分の)マークマンを抜く力はあるわけですから、なんとかリーチやジュリアスを(ポストから)引っ張り出せるように突っ込んで行かないと、明日は勝機が見えてこないと思います。」