仙台89ERSの桶谷大ヘッドコーチ(以降、桶谷HCと表記)は開幕前のアーリーカップ東北でチームが勝つためには『やんちゃ』さも必要だと語った。1月25日、35試合目にあたる福島ファイヤーボンズ戦のあと、ここまでの戦い方について問われた指揮官の答えは「(選手たちが)大人になった」であった。
********************
大人のチームへと成長し続ける
「昨シーズンなら今日の試合展開だと転げ落ちてしまうところを踏ん張ることができるようになってきた」と桶谷HCは成長し続けるチームについてを語った。
「自信がついたからメンタルが崩れなくなったのかなと思う。スキルもそうだが、ゲームプランへの遂行能力が高くなったことが自信につながっている。続けていければ必ず全員伸びる」
若手の澤邉圭太、白戸大聖選手について「澤邉がよくなっている。あと今シーズンは白戸。守備はチームでも一番良いので安定しているので大きく崩れない。コンスタントに二桁得点できるともっと簡単に勝ちに運べる」と評価する。
また、試合途中で負傷した阿部翔太選手に関しても「高さの部分やリバウンドでも茨城の真庭選手、広島の朝山選手にも負けていない」と信頼を寄せていた。
翌日26日会見でも「この状況で昨シーズンよりも勝ちきれているのは、日本人選手ができることが増えてきたから。白戸はリバウンドに行くようになったし、澤邉は得点できなくてもファールをもらい、パスができるようになった。圧勝していくにはマクヘンリー選手(信州ブレイブウォリアーズ)のように全てができる4番(パワーフォワード)が必要だが、(チーム編成上)叶わない。今の構成を考えると選手たちは成長している」と正直な気持ちを語っていた。
若手選手だけでなくベテラン選手について桶谷HCは片岡大晴、金城茂之選手の存在が大きいと語る。
「ふたりとも性格も考え方も違うが、どちらも勝つためにどういう行動をとるべきかを知り、若い選手たちには模範になっている。先輩がふたりいることでついていきやすい。どちらかについていけば良い。この先輩とは合わなくても、もうひとりとは合うということもある。ふたりの存在は非常に大きい」
コート上ので役割について聞くと片岡選手は「オフェンスでは苦しいときにシュートを決めてほしいと言われている。自分自身でもそう貢献したい」と得点での貢献。
金城選手は「試合がバタついた時に方向性を正す役割」と攻守での「安定感」がその役目であると語った。
片岡選手にベテランとして若い選手への接し方について聞くと「誰が上とか下とか変わらずに、いち選手としてみんなと接している。空気のような感じ」と笑った。
金城選手は「うちの若手は良いものを持っていて、上手く行っているときは見ていても楽しいプレイをするが、一度失敗すると萎縮してしまうので、『ここでプレイするのを止めてはダメだと』と言い続けた。聞いてくれば答えるようにもした。最初はディフェンスも緩かったので、ファールすれすれに良い感じでガンガン当たっていった。それが今の練習のベースにもなっているし、激しいプレイもできている。試合にもつながっているし、相手のプレッシャーにも焦らなくなった。そういう心がけというか手助けになっていると思う」と若手選手への接し方を分析する。
片岡選手は現在のチーム状態については「開幕当初はコーチ陣が言ったことだけをやろうやろうとしていたが、コートでプレイするのは選手5人なので、もっと『自立』してやらなければいけなかった。選手たちで話し合って自分たちでしっかりやらなければいけないし、コーチの要求も超えなければならないというのがはっきりした後は良い方向に向かっている」と認識していた。
********************
仙台は東地区では首位だが、総合順位としては信州、広島についで三番手だ。
片岡選手は「突出した選手がいれば助かるが、ナイナーズにしかない自分たちができる補強の仕方であったり、チーム作りがあるので、全員でやるのが我々の強みだ。(信州と広島)ふたつとはまた違う集団」と比較する。
また金城選手の分析は「2チームとも対戦したが、両チームともに特徴があり、広島は攻撃的で、信州はバランスある中で全員バスケをする。対抗する自分たちの色であるディフェンスをもっと強化できれば面白くなる」
ふたりのベテランは冷静だ。
桶谷HCは今シーズンから変更になったプレーオフ・フォーマットの質問に対して「先ずはホームで試合ができるようにしたい。上のふたつ(信州と広島)に手が届かないわけではないので、食らいついていきたい。どのチームにもどんなことが起きるか予想できないので、常に(全体順位の)2番目までに入っておきたい。そうすればB1入れ替え戦まで常にホームゲームできる」とホームコートアドバンテージを取りに行くことに貪欲だ。
「プレイオフでは一つのミスで流れを持っていかれるので、もっとバスケIQを上げていく必要がある。簡単に20点差をつけて勝てれば良いが、それをやった翌日に全くダメな試合をしているので、常に危機感を持ち続けていくこと」が大切だと力説する。
「仙台のような守備のチームはオン・ザ・エッジ(ギリギリの状態)。常にオン・ザ・エッジ。そのほうが最後にソリッド(堅実)なチームになるのかなと思っている」と指揮官は緊張感と危機感を忘れていない。
第3の外国籍選手としてエリック・ジェイコブセン選手の加入、月野雅人選手も怪我から復帰し、特別指定選手として明治大学の渡辺翔太選手も加わり厚みも増した仙台89ERSは更に大人のチームとして成長していく。
(定山 敬)