過去の蓄積から未来を予見する-千葉ジェッツ ビデオアナリスト 木村和希-

スタッツや数字をどう言語化していくのか

誰が何点取ったのかなどについ目が行きやすい。 スタッツはどうすれば一般の人にも浸透するのか聞くとパソコンから画像を見せてくれた。

「スタッツ分析のフレームワークというものを作った。理由は同じ50%でも昨日の試合と今日の試合の50%は異なる。いつ聞かれても同じ数字の再現性が必要なので、フレームワークが重要性を感じている。数字を使うことでいつも同じ答えを導き出せる」

その都度フレームワークを見せるのは難しいのではないかという疑問に対して 「例えば、あるチームのPPP(得点効率)が0.99だと伝えても、だから何だという話しかならない」

「その要因はターンオーバーが少なくシュート確率(eFG%)が高いチームと想定したときに、シュート確率がひとつのキーファクターとなる。具体的にシュート確率(eFG%)の上昇要因はスリーポイントの確率であるということがわかれば、そのチームのPPPを下げるためにスリーポイントを気をつけようという話になる。
このようにフレームワークに落とし込んだ結果がスリーポイントであれば良いが、ほかも調べずにただスリーポイントの確率が高いというだけでスリーポイントがキーになるというのは全く異なることだと思うし、印象値でしかない」

専門用語や数字はどうしてもわかりにくく感じる。ではどのように言語してらよいのだろうか「いちばんわかり易い方法はカテゴライズ(分類)すること。数字の近さからこのチームとこのチームは似ているといった手法は使える」

「ピックアンドロールのロールマンとポストプレーが多いからこの選手はセンターだと分けることができる。いくつの数字を比べることで分類可能になる。
例えばオフェンスリバウンドとターンオーバーの多さからトランジションの多いチームと分けることもできる。トランジションから2対1の場面でシュートを外すからオフェンスリバウンドになり、またトランジションからミスするケースも多い。数字を使って定義したりカテゴリーを作ることは可能だ」

「言語水準としては数字が一番高いと思う。4(よん)という数字は共通でぶれない。アメリカ人も4(four)は4と理解できる。
『多い』と発したときに、人によってその『多さ』は異なり共通理解は難しいが、数字は理解しやすく共通言語化可能なので、これを活かしていきたい」

チームにとって共通言語化することが重要だという。
「今、千葉ジェッツの中ではPPP(得点効率)は選手の中からでも普通に出てくる言葉だ。
選手たちが練習でも普通に『このプレイのPPPは高いのか?』というた感じで聞いてくる。そういう言語化ができれば全員が同じ理解ができる。用語をしっかり定義していくことはチームの中での非常に大切だ」

では、千葉ジェッツを言語化するとどうなるのか聞いてみたが、答えはシンプルだった。

アグレッシブなディフェンスから走る。これがコンセプト。
大野(篤史)ヘッドコーチが就任し、GMと話し合って決めたコンセプトをもとに選手や我々が集まってきているので、違うバスケをするのことは考えられないし、全員が実行しにきている。このコンセプトにあうBGMを試合中に流して環境を作り、ブースターもそれを見に来ていると思う」

千葉は開幕渋谷戦で連敗。その後も調子が上がらず川崎戦で連敗し、大野ヘッドコーチも「選手たちがコート中で解決できていない」と苦しい心情を吐露していたのが印象的だった。

木村は「今シーズン前半が実行出来ず苦しかったが、シーズン半ばを過ぎ昨シーズンと同じスタッツになってきている。それとともに勝敗が相関しているのでアグレッシブなディフェンスから走ることが我々の勝ち方であり、求めているそのものだ」と分析する。

「細かい部分では選手の入れ替えもあるが、中核の部分は変わらない。それを数値化するのは非常に難しいし、トランジションのポイント(速攻からの得点)だけでわかるものではないと思う」