【三遠ネオフェニックス】リード・アンド・リアクト・オフェンスの完成とは…

三遠ネオフェニックスの取材する時、藤田弘輝ヘッドコーチ(以降、藤田HC)にいつも必ず質問していることがある。それはチームが掲げるリード・アンド・リアクト・オフェンス(read and react offense)が完成したのかどうかだ。

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ガード(鈴木達也、川嶋勇人選手)がコート上のコーチとしてプレーを組み立てをしている

リード・アンド・リアクト・オフェンス(read and react offense)とは何か。特定の攻撃のパターンではないし、ましてマンガの主人公が繰り出すような必殺技でもない。2men(2対2)ゲームを軸にコートの5人がシームレス(途切れなく)に動くことであり、もっとも簡潔に言うと「ボールを動かすだけでなく人も連動して動く」攻撃のことである。
三遠はそのスタイルを標榜している。

3月10日の琉球ゴールデンキングス戦での会見後に佐々HCに個別でリード・アンド・リアクトについて聞いてみたが「うちも近い形」と言い、藤田HCも琉球に対して「チームとして強調している部分が似ている」と語っていた。
スペーシング(コートを広く使い)と中と外を上手く使い分けるという意味では三遠も琉球もスタイルは近い。

10日11日両日とも競り合った試合となったが、三遠が2連勝した。10日はガードの川嶋勇人選手が活躍(15点3アシスト)。11日は鈴木達也選手(32分出場し5点3アシスト3スティール)が目立った。2人共にポイントガードであり三遠のオフェンスの司令塔だ。どのような組み立て方をするのかと藤田HC問うと「コーチから指示は出していない。二人がコート上のコーチとして組み立てをしている」と答えた。

今シーズン新加入した川嶋選手の活躍について「怪我からの長期離脱をしていて本調子ではないので、フィジカルの部分でアップダウンがある。その中でも自分の持っている部分を全て出しきっている」と藤田HCも全幅の信頼を置いている。
10日の試合で逆転を生みの出したのは川嶋選手のフリースローとスコット・モリソン選手のゴール下のシュートだ。「昨シーズンの違いは勇人とモリソン。今日は良いプレーをした」と藤田HCが二人の名前を挙げたように新戦力もチームの中に溶け込んでいる。

勝ち切ることが出来たのはちょっとしたエッジ(優位性)の差

琉球戦はお互いの良さを潰し合うタフな二試合だったが、「この2日間は我慢比べになると予想していた。勝ち切ることが出来たのはちょっとしたエッジ(優位性)の差で、それはリバウンドとディフェンスだ」と11日の会見で藤田HCは述べていた。
印象的なプレーは第3クウォーターでダブルチームを3回し、ターンオーバーを誘発したことだ。

「(仕掛け方の)全部は言えないが、メリハリは重要だと思っている。今日は第3クウォーターで仕掛けた。太田をはじめビッグマンたちが勇気を持ってブリッツ(ダブルチーム)に出てくれた」と守備でのプレーを挙げた。10日の会見でも琉球のように速いトランジションの中から仕掛けてくるピック・アンド・ロールに対して藤田HCが鈴木選手を「(守備を)しっかりと遂行できた」評したように、2試合のエッジはこの部分だったことは明らかだ。

完成がいつになるかは分からない

守備と攻撃が一致し、6連勝を飾った三遠だが、「スペーシング(場所のとり方)やプレーを間違えたりとまだ修正点はいくつかあるので、課題を修正していきたい」と藤田HCは気を緩めることはない。

以前、会見で「人(選手)、ボール、スペースの3つが合致した時に相手からすると本当の止めにくいオフェンスになると思う」と語っていた。
個人的にはリード・アンド・リアクト完成の答えなのではないかと思うのだが、最初の問いに対して「完成がいつになるかは分からない」と藤田HCは言い続けているし、次の聞くともそう応えるだろう。

三遠ネオフェニックスはリード・アンド・リアクト・オフェンスの究極の形を追い求め続けているのだ。
(文=定山 敬)