【栃木ブレックス】ブレックスメンタリティとは何か?

栃木にはチーム全員というか全体を覆う雰囲気や風格が存在する。それをチームのメンタリティと置き換えても良いのかもしれない。では、そのメンタリティとは何なのだろうか…。

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初代Bリーグ王者栃木ブレックス(以降、栃木)は開幕序盤から苦しい時期を過ごしていた。ヘッドコーチの退任から安齋竜三アシスタントコーチがヘッドに昇格し新たな体制になり、11月から少しずつ変化を始めていった。
インサイドの要でもあるジェフ・ギブス選手の怪我から帰還や渡邉裕規選手の電撃現役復帰だけがチームを変革したわけではない。

「先ずはディフェンスの激しさを第一に。全員でディフェンスする」

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これは安齋ヘッドコーチ(以降安齋HC)が正式に昇格する前の17年11月4日の千葉戦後の会見で言ったことだ。
この試合に限ったことではないが、試合後の会見で栃木はコーチも選手も攻撃のことはあまり口にしない。必ずといって良いほど「ディフェンス」について課題や修正点をあげる。

11月以降、栃木が勝利した試合の約11点は速攻からの得点である。
安齋HCが「ディフェンスからトランジション(攻撃への切り替え)で得点を取っていく」ことを掲げていることからも速攻を出すキーとして守備の重要度をうかがい知ることができる。

開幕から得点を取ることに悩み続けていた栃木だが、安齋HCは「得点が伸びないのは守備の崩壊が最初にあったから」と分析する。続けて「アウトサイドシュートに長(た)けた選手が多いわけでもインサイドでガンガン得点を取るチームでもない。だからこそディフェンスから走れる事がチームの良さ」と強調する。
11月5日千葉との試合に勝利した会見でも「B1のチームの力と力の差はほとんど無い。だから自分たちが信じていることをやり続ける」と言ったようにディフェンスからの速い攻撃を続けることが復活を後押しする要因となっているのだ。

オフェンスの変化を体現する喜多川修平選手

アウトサイドシュートに長けたチームではないと安齋HCは言っていたが、ハーフコートオフェンスのキーマンとして喜多川修平選手が挙げられる。10月28日の北海道戦までの9試合の平均得点は4.7点だったが、その後の29試合の平均得点は9.6点。
今シーズンスタートで出場した試合は12勝5敗。二桁得点は15試合で二桁得点しチームが勝利した試合は10試合となる。

12月23日からはほぼスタートに定着(18年2月4日のシーホース三河戦を除く)し、平均得点9.9点でオフェンスの要の1人となっている。喜多川選手に先発での起用が固定化されつつあることを聞いたが「シーズン最初の時よりはチームにフィットしてきている」と少しづつ手応えを掴んでいた。

また「ディフェンスだけでなく、得点の部分でもチームに貢献出来るようになっていきたい」と語り、「二桁得点できればしたいですが、それよりも良いシュートを打ちきること」と自分自身に課されている役割を理解している様子だった。
安齋HCからは「疲れたら手をあげるくらいの気持ちでプレーしろ」と言われ、「コートに居る時は100%の力を出しているし、しっかり判断してベンチに下げられるので、またコートに戻る時は120%の力をだせる」と気持ちの切り替えがシーズン序盤と比較しても良くなっていることを強調していた。

オンザコートの変化

18年1月から栃木は外国籍選手のオンザコートを2-1-1-2に固定している。左アキレス腱断裂のケガからジェフ・ギブス選手が復帰したことが大きな理由なのではないかと安齋HCにたずねたが、「ジェフ選手の復帰は関係なく、このルールがBリーグで採用される時から2-1-1-2を考えていたことだった」と明かした。
2-1-1-2を採用する最大の理由は「(竹内)公輔選手のアドバンテージを活かせる」からだ。
「第1と第4クウォーターに外国籍選手が二人コートに立てるとしても、公輔選手を3,4分は必ず出場させることになるので、結果彼の出場時間が長くなる」と安齋HCは説明する。

1-2-1-2であっても2-1-1-2を採用しても第3クウォーターは必ず『1』の時間帯となる。帰化選手の居ないチームであれば大型日本人選手の存在は大きい。2月18日の島根戦でも大きな流れを作り出したのは竹内公輔選手の第3クウォーターの活躍であり、速攻からのダンク2本はまさにチームに勢いを呼び込むものであったことは間違いない。

悪い時にみんなでどう声を出しあって、お互いを信じていくか

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心理学者のアルフレッド・アドラーの名言に『臆病は伝染する。そして、勇気も伝染する』というのがある。

シーズン序盤は臆病なプレーが選手に感染し悪い方向へと向かっていたが、そんな時であっても田臥勇太選手は「悪い時にみんなでどう声を出しあって、お互いをどう信じていくのか」が重要だと説いた。「自分はしっかりとリーダーシップを取っていくことができれば勝つチャンスを必ずモノにすることができる」と敗戦後のインタビューでも言っていたことが印象的だった。

喜多川選手も「絶対に下を向かない。前を向いて全員が同じ方向を見ている」とチームのメンタリティを説明してくれた。
安齋HCは「ダメな時に一人でも下を向いたり、悔やんだりしているとそれがチーム全員に伝染するので、そういう時こそチームで助け合う」とチームが一丸になることを会見で語っていた。

信念を貫き変えずにやり続けること(ディフェンス)とより良い変化を求め柔軟に対応すること(オフェンス)で「臆病」は「勇気」に変わっていった。シーズン序盤の脆さは今の栃木にはもはや存在しない。

栃木の強さ、つまりブレックスメンタリティとはそういうものなのかもしれない…。
(文=定山 敬)