Talk about Serious!~埼玉ブロンコス、ケニー・サターフィールドが目指す地平~

プレイオフへ行くためには、目の前の一つひとつの試合に勝っていくことだ


写真:(C)HiROKO WATANABe / SAITAMA BRONCOS / bj-league

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今シーズンもやはりと言うべきであろうか。他のチームのポイントガードよりも頭ひとつ抜け出いている印象を受けるのは当然のことかもしれない。
なぜなら彼は元NBA選手だから。
ケニー・サターフィールドは2001年~2003年までNBAに在籍(デンバー・ナゲッツ、フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)し、NYのストリートバスケシーンの生きるレジェンドの一人でもある。
昨シーズン、bjリーグ一年目にして最多アシスト(一試合6.5アシスト)賞を獲得している。
bjリーグの中でも屈指というべきポイントガードを擁する埼玉ブロンコスの最大の懸案事項。それはプレイオフに進出し優勝すること。
東日本大震災により昨シーズンはシーズン途中で活動休止した。休止を余儀なくされたことで、埼玉よりも下位にいた秋田、富山が繰り上げでプレイオフに進出している。

今シーズンはダラス・マーベリックスGM、ドン・ネルソンのお墨付きをもらったディーン・マーレイを指揮官として招聘(しょうへい)。ウエスト・バージニア大学でNCAAファイナル4に進出を果たす原動力ともなった若きジョン・フラワーズに、2年連続得点王にも輝いたジョン”ヘリコプター”ハンフリーを2シーズン振りにbjリーグへ召還し、他のチームが羨むほどのスター選手を擁するチームとなった。

スターの多いチームだから当然オフェンスに目が行く。10月29日ホームでも100点ゲームで快勝し、自身も24点8アシスト4スティールの活躍で満足のいく結果だった筈だが、試合後に自分のプレーを振り返ってもらうと意外な言葉が返ってきた。

「満足はしていない。特に後半ディフェンスが曖昧になり、簡単にシュートを決められたので、明日はその部分は修正したい」

29日は前半こそ無得点だったが、後半に24点上げている。最初はピックアンドロールやアイソレーションからインサイドに切れ込んでいく。次はアウトサイドシュート。ポイントガードとしてどう組み立てているのか聞いてみると、

「基本的に相手のディフェンスの流れ、ゲームの流れを気にしている。今日はフラワーズのシュートタッチが良かったので、前半は彼にボールを集めた。後半はピックアンドロールが上手く機能したことで自分の得点機会が増えたと思う」

翌10月30日の試合は修正したいと言っていた課題が悪い形となって現れた。後半猛追したが、前半につけられた17点差が大きく響き、岩手ビックブルズに初勝利をプレゼントした。同点になる時間もあったが、彼が放った最後の3Pシュートはリングに吸い込まれることはなかった。
それでもサターフィールドはトリプルダブル(得点、リバウンド、アシストでそれぞれ10以上)を達成している。

試合に負けはしたが、外国籍の選手だけでなく日本人選手(北向、新井、原口)らが戦う姿勢を見せたことは大きな収穫だった。
そんな日本人選手やリーグの印象については、

「埼玉の事しか分からないが、昨シーズンよりも良い選手は増えたと思う。リーグ全体でも同じ事が言えると思うよ」

まだシーズンは始まったばかりだが、ブースターの最大の願いでもあるプレイオフ進出への抱負を聞いてみた。

「毎試合、一つずつゲームに勝利していく。そうすれば長いシーズンの先のプレイオフが見えてくると思う」

埼玉がプレイオフ、さらにその先に行くためには特にホームゲームで取りこぼさないことだ。
チーム、選手、ヘッドコーチ、ブースターもみんなその事を熟知している。もう何年も苦しいシーズンを過ごしてきたのだから。目の前のゲームを1戦1戦大切に戦っていくことが出来れば、シーズン序盤からでも昨シーズンのような7連勝(それ以上の連勝)も可能だと。1戦1戦、今が大切だと叫べば叫ぶほどに私は未来を見てみたくなるが、中国にこんな諺があったことを忘れていた。
指が月をさすとき、愚者は指を見る
サターフィールドが目の前を指すことで、つい間近の試合を気にしてしまう。しかし彼が目指す地平は私が考えるよりも遙か先にあるのかもしれない。

(文=定山 敬)