記者会見の意義-11月1日の埼玉対新潟戦を振り返って-

記者会見の意義-11月1日の埼玉対新潟戦を振り返って-

試合前の疑問
中村和雄,小野寺龍太郎
記者会見とは答え合わせの場のようなものである。
応援や観戦ではなく「取材」という立場で試合を観る場合、漠然と試合をながめないようにするため、試合前にある種の仮説や疑問を立てて挑んでいる。
また試合中に起こる出来事が疑問となる場合がある。それを解消するのが記者会見というわけだ。

11月1日の埼玉ブロンコス対新潟アルビレックスBBでの試合に入る前の疑問は「なぜ新潟はチャールズ・ヒンクル選手との契約を解除し、クリス・オリバー選手と契約したのか」ということだ。
ヒンクル選手は不調ではなかったし(新潟在籍時の8試合でもベンチから出場にもかかわらず平均22.9点あげている)、怪我でもないにもかかわらず(新潟との契約解除後に奈良と契約しプレイしている)。

新潟の中村和雄HCは会見で、オリバー選手の評価についてこう答えた。「(彼のプレイに)驚いています。まだ(来日して)1週間なんですよ。ぼくの経験でも1週間目は時差ボケでふわっとした状態のはずだし、4月くらいから(公式の)試合に出てないと思いますよ。まずボールがなくならない(ターンオーバーが少ない)し、得点を取る種類が多い。そしてハートが良いです。非常に良いハートを持っている」

じょう舌な中村HCは続けて「チャールズ(ヒンクル)も悪くなかったけど、(群馬のトーマス)ケネディ、(秋田のリチャード・ロビー)リッチー、(仙台のウェンデル)ホワイトを守れるやつが欲しいと思っていた」

TK bjリーグは今シーズン、オン・ザ・コートの制限(外国籍選手は常時2名までコートに立てる)が変更された。昨シーズンまでなら時間帯によって2番(シューティングガード)や3番(スモールフォワード)にも得点力のある外国籍選手を置くこともできたのだが、今シーズンは難しくなった。大型の日本人選手が少ないTK bjリーグでは3番までを日本人選手がつとめ、インサイドに近いポジションは外国籍の選手という構成になりやすい。
それだけ4番(パワーフォワード)ポジションにはインサイドだけを支配することだけでなくスピード、長距離のシュート力のある選手が求められ、東の上位で成功しているチームが多い。本来なら4番(2、3番でプレイ)ではない選手がそのポジションでプレイし、得点を量産しているケースだ(その最大の成功例は福島のルブライアン・ナッシュ選手であろう)。
そういった相手チームのエースをおさえる選手の獲得を考えていたが、それに加えてオフェンスでも実証してみせたというわけだ。

「彼自身、自分の一番の武器はディフェンスだと言ってるけど、それであの点数(この試合24得点)を取りましたから。これはちょっと(スカウトとして)当たったかなと思う」と中村HCは嬉しそうに語った。

また、中村HCはオリバー選手への評価の最後に「頑張っていると秋田での最後と同じように良い外国人選手に巡り会えるのかなと思っている。おかげさまで」と笑って締めくくった。

試合中におきた疑問
試合終盤にちょっと不可解な事があった。試合は埼玉64-91新潟でこのまま新潟の勝利で終わる直前の残り7秒。ガベージタイム(garbage time 試合の優劣がほぼきまった時間)で負けていた埼玉は残り7秒でタイムアウトを要求し、その直後に新潟がタイムアウトをとったことだ。「何故1点を争う試合では無かったにもかかわらず残り7秒でお互いにタイムアウトを要求したのか」
しかも新潟ベンチは特に指示する訳でもなく、ただ座っていただけだ。コートの外から見ているだけではそこに戦術的な意味合いがあるのかも解らない。

中村HCは「(普通は)あの点差(27点差)で残り7秒でタイムアウトは取りません。われわれだけで(試合)やっているわけではないから。お客さんもいるわけだから。だから、こちらも意地悪くタイムアウトを要求した」と説明した。

中村HCは続けて「あういうのはやめようと。タイムアウト残っているならもっと早く取らないと。先に取って作戦を立てるべきだと思うね。オフィシャルもブースターも含めて試合しているので、そういう場でありたいと思う」

埼玉の小野寺HCは「(戦術的に)何をプレイさせようとかではなく、気持ちの部分で最後までしっかり戦おうと伝えたかった」と残り7秒でのタイムアウト要求についての理由の述べた。
もちろん彼自身も不要であることは理解していたが、「本来は(タイムアウトを)取るべきではないと思っています。点差も開いても(試合の)終わり方は重要なので、あえて取りました」と語ったように勝ち星の少ない埼玉には必要なタイムアウトであることを強調していた。

NBAであればそのまま時間が流れて終わっている可能性は高いが、日本のプロバスケに不文律(公式には書かれていないが、暗黙のルールとして存在している)があるわけでは無いので、ここではそのタイムアウトの是非については問わない。
ただ、観客やライターが抱いた疑問や謎を解消できる場所しての記者会見は有効なのだと再認識される試合であったことは間違いない思っている。

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