<interview> 澤口誠選手(岩手ビッグブルズ)

<インタビュー> 澤口誠選手(岩手ビッグブルズ)

昨シーズン、彼の名前には特別な形容詞があった。

「bjリーグ史上初高卒選手」

ドラフト1位での所属先は、秋田ノーザンハピネッツだった。
周囲は期待し、本人もまた、それに応えようとプレーした。
19歳でbjリーグに飛び込んだ澤口誠に、一年間を振り返ってもらった。

(聞き手=西本匡吾/Twitter:@kyogo_nishimoto)

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-まずは、昨年の今頃から。秋田ノーザンハピネッツに加入して、凄いわくわくしていた時期だったのではないかと思います。

そうですね。昨年も、今頃に本格的な練習が始まりました。わくわくという気持ちと、これから頑張るぞという準備をしていましたね。

-秋田での初練習、どうでしたか?

やっぱり、緊張しました。でも、先輩方が優しく話しかけてくれたので、やりやすい環境にいたと思います。

-同世代のなかから、いきなり大人の集団に入り、戸惑ったと思います。

それは、凄い。

-何を話して良いんだろうか・・・という感じ?

いや、話かけてくれたこともあり、そういう面では大丈夫でした。ただ、バスケットボールの部分では、経験の差が凄くあったので、そこでは苦労しました。

-やっぱり上手いな、と。

そうですね。大人の上手さがやっぱりあるので、真似ていこうと思いました。

-その中で、自分が通用できていた部分はどこだったのでしょうか?

走ることは、まだ大丈夫かなと思いましたね。

-ただ、技術の差は。

感じていました。

-そんな中で入った2010-11シーズン。10月、11月はプレイタイムも貰えていたと思います。その要因はどこにあると思っていましたか?

シーズンの最初というのは、戸惑いもあったんですけど、まずはやってみようという気持ちでした。がむしゃらにプレーしていたら、それに結果が付いてきたという感じです。

-でも、12月、1月、2月と少しプレイタイムが落ちてしまいました。なぜ?

これは自分の考えなんですけど、シュートにいく回数が減ってしまったと思います。自分でいけるところでも、外国人にパスを回して任せてしまうという部分がありましたね。

-遠慮をしてしまっていた?

試合を重ねていくうちに、確率が出てくるので。それを見ると自分はシュートを打つ確率ではないと思い、外国人にパスを出してより確率の高いほうに・・・というのがダメだったのかなと。

-2月のときに「自分で力を抑えてしまっている」と言っていましたが、こういうこと?

そうですね、自分のプレーを抑えて、周りをどんどん活かそうとプレーしていたので。それがあまり良い方向にはいかなかったです。

-では、自分として不本意なところはありましたか?本当は自分でいきたい。でも、周りを活かさないと、という気持ちもある。

いや、全然気付かないうちにそうなっていました。だから、チームメイトからは「もっといけよ」「ボールを取られても良いからいけ」と言われていたんですけど、試合になるとパスを出してました。

-意識ではなく、無意識のなかで。

はい、練習のなかでそうなっていったと思います。

-ロバート・ピアースHC(当時)には指摘された?

多少は言われました。でも、長谷川さん(秋田ノーザンハピネッツ)には一番、「もっとやっていいぞ」と言われましたね。

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-昨シーズンでは何が一番印象に残っていますか? 

自分としては、オールスターが一番印象に残っています。初めてポイントガードをやって、本当にわからないなかでバスケットボールをやっていたのですが、多少は自分のプレーが出せたのかなって思うし、凄く良い経験になったと思いました。

-一年間で通用するなと思ったところは?

瞬発力は他の人より多少はあるかなと思います。これをどう活かすかを、考えなければいけないです。

-では、どう活かしていきますか?

試合中で1対1になった時の瞬間に相手をきっちり抜いて、次のプレーに繋げていくことが大事です。その瞬間の速さを出していければ良いかなと思っています。

-やっぱり、アシストより得点にこだわっていきたい?

いや、まずは、自分の得点というよりチームのオフェンスを考えて、その上で得点ができれば良いのかなと思っています。

-はい。というのも、「得点で10位以内に入りたい」とおっしゃていた記事をみました。これはいつまでに成し遂げたい、というのはありますか?

もちろん、早いうちが良いですし、個人のランキングにも入りたいです。でも、昨シーズンは震災の影響があってのプレーオフ進出だったので、今年は自力で勝ち取ってプレーオフに進んでいきたいです。個人のランキングも気にしながら、チームが上位にいるのを目指していきたい。個人で一番になっても、チームが勝てないのでは意味がないので。ランキングというよりも、チームの順位をあげていけるような選手になりたいです。

-では、そのチームとしての目標はどこに置きますか?

新規参入で優勝したチームないので、凄くそれはしたいと思いますね。

-一方で、個人的な部分では「同い年の選手がいなくて比べられない」とおっしゃていた時期もありました。それは今年も変わりそうにないです。

岩手に来てからは、それは全く考えないようになりました。やっぱり、てっぺんに行くためには、いろんなことを考えるより、自分のスキルをあげることが早いので。いろんな人を見たり、話を聞いたりしても、自分のすべきことをやる。で、いつか同じ舞台で勝負できる機会があったら、そのときは負けないようにという気持ちでいます。

-なるほど。これはいろんなところでおっしゃていたので。

そうですね。ドラフトの中継を見ていたんですけど、いないのかなーという感じで見ていました。でも、そういうことを考えていてもきりがないので、とにかく今を大切にしていこうという気持ちになりました。

-新シーズンに向けて、自分がプラスアルファしていかなければいけないところは?

それは自分のプレーを出しながら、チームに合わせていくというのが、今は一番大事かなと思います。新規参入チームなので、自分プレーだけをやっていたら、チームにならないです。チームメイトのプレーを見て、その中で自分の色を出していこうと思っています。

-自分のプレーとは、スピードを活かしたドライブ?

そうですね。そういうプレーを出すことができれば一番良いですね。

-目標としている選手はいますか?

石崎巧さん(独・BVケムニッツ99)は、一回しかマッチアップしてないんですけど、凄い上手いなと感じました。自分でドライブにいくことができるし、周りを使うべきところで使える。ああいう選手になりたいですね。

-何が参考になりました?

ステップです。

-ステップ?

レイアップにいくときの足のステップが全然違います。「1、2」で進むところを、ただ真っ直ぐ進むのではなくて、横にずらしてプレーしたり。あと、あえて体を相手に身体をぶつけてシュートに持っていくところが、凄い上手かったです。こういうプレーは学びたいなと思いましたね。

-一方で、外国人はどうでした?多分、初めてだったと思うのですが。

はい、アメリカ人とやったのは初めてで。身体つきが違うというのと、あとは単純にバスケットボールが上手いなと(笑)

-インサイドに入り、2mオーバーの選手がいる。レイアップにいくかどうか、躊躇した?

bjリーグでは―これは自分の考えですが―こて先の上手さだけでは勝てないと思います。真っ向勝負にいって、止められたら、それはじょうがない。でも、正面からいって、入れた時の喜びは凄いです。やっぱり、外国人選手とは真っ向勝負はしたいなと思います。

-やっぱり、最初は手こずった?

最初は何回も吹っ飛ばされて、それでもフリースローで点はとれていたのですが、それがシーズンが経つにつれて段々なくなっていきましたね。

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-ここからは少しだけ、読者の質問に答えて頂ければと思います。まず、森岡南高校の先輩である川村選手とは、高卒でプロリーグ入りと境遇が似ています。意識してますか?

いや、意識はしていないです。高校は同じでしたが、入れ違いだったので接点もないんです。

-2011-12シーズン、最もマッチアップしたい選手は?

信平さん(秋田ノーザンハピネッツ)です。秋田で仲が良かったですし。ポジション的にマッチアップするかはわからないですが、一回はやりたいです。

-勝てる自信は?

信平さんはディフェンス上手いんですが、そこは勝ちたいですね。

-今はbjリーグの選手ですが、将来的には国外へ行くという希望はありますか?

それはあります。一度は行ってみたいなと。

-アメリカと欧州なら?

そこまで全然考えてないです。でも、海外でやってみたいなとは思っています。

-それは昔から考えていた?

思ってなかったですね。まずはbjリーグの選手になるというのが目標でした。で、その後に出来た目標だったので。つい最近ですね。

-これは少し繰り返しになってしまいますが、ファンの方に見てほしいプレーは?

自分が中に切り込んだ後、相手の外国人選手がカバーに来るので、そのとき自分はどうするか、というところですね。そこでの相手との駆け引きを見て欲しいです。

-あと、これは質問ではないのですが「NBAを目指して欲しい」という声もいくつかありました。

・・・(笑)

-確かNBAは見ないんですよね。

見ないですね。NBAの選手の話をされても、ついていけないです。

-でも、これもきちんと伝えたということで。新シーズンに向けて、今年も頑張ってください。

はい。ありがとうございます。

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一年が経ち、今年で二年目となる。
ルーキーの肩書きは、もう、ない。

「てっぺんに行くために」

彼が発したその言葉に、おそらくは意識して発したであろうその言葉に、期待したい。