bjリーグ ファイナル4 イースタンカンファレンスファイナル 浜松vs新潟戦 衛藤晃平氏によるプレビュー

5/21に有明スタジアムで開催されるファイナル4、イーストの決勝となる浜松東三河フェニックスvs新潟アルビレックスBB戦について、プレイオフセミファイナルに引き続き、衛藤晃平氏によるプレビューをお願いしました。前回同様、対談形式を記事にまとめてありますので、試合観戦のポイントとして、是非ご覧ください。

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今シーズンの浜松と新潟の対戦結果は下記の通り。通算で浜松の4勝2敗となっています。

第1戦 浜松71-70新潟@湖西市アメニティプラザ(2010.11.6)
(後半、新潟がインサイドアタックで追い上げるも、浜松は試合終了間際に大口のアシストで逆転勝利を収める)
第2戦 浜松82-64新潟@湖西市アメニティプラザ(2010.11.7)
(序盤から安定した試合運びの浜松が快勝し、2連勝を飾る)
※ここまでが開幕当時のメンバー。

第3戦 新潟81-84浜松(OT)@パルパーク神林(2011.2.5)
(お互いにミスの多い展開はOTへ。新潟が終盤のチャンスを生かせず逆転負け)
第4戦 新潟83-80浜松@パルパーク神林(2011.2.6)
(新加入のダヴィッツ、そしてベンチメンバーの活躍もあり、今季新潟が浜松戦に初勝利)
※このシリーズのみ新潟にニック・ダヴィッツが在籍。

第5戦 新潟78-75浜松@鳥屋野総合体育館(2011.4.23)
(新加入のリーチのインサイドと小松のアウトサイドで、アーノルド一辺倒の浜松に新潟が競り勝つ)
第6戦 新潟69-80浜松@鳥屋野総合体育館(2011.4.24)
(浜松の厳しい守りに新潟はミスを連発。根東の奮闘も及ばず、浜松の勝利)
※新潟はウィリー・ヴィーズリーとニック・ダヴィッツがチームを去り、ジョージ・リーチが加入。一方の浜松はジャメイン・ディクソンがチームを離脱。有明ではお互いにこのメンバーで試合に挑む。

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-それではよろしくお願いします。この試合はどのような展開が予想されますか?
「まず、新潟が先手を取る展開になると思います。新潟のオフェンスですね。新潟のビッグマン2人(リーチ、アシュビー)のラインナップに、浜松が戸惑うことが考えられます。まずはインサイドで、新潟が先にアドバンテージを取るのではないかと思います。」

-新潟に関しては廣瀬HCがオンザコート2、日本人3人での戦いを標榜しています。プレイオフ・セミファイナルでの秋田戦もそうでしたので、恐らく浜松戦もこのラインナップで行くと考えられます。
「理想は、そのメンバーで最後まで引っ張ることだと思います。ただし外国人3人と、3-2のマッチアップゾーンを間違いなく投入してくるでしょう。」

-秋田戦では絶大な効果を発揮したこの3-2ゾーンですが、浜松に対してはどうでしょうか?
「新潟はこの戦い方のまま行くと思うのですが、やはりマッチアップをしっかりと確認しなければいけません。アーノルドとパーマーは非常にスマートにプレーしますので。新潟がその部分さえクリアすれば、浜松とは言え簡単にはこのゾーンを攻略出来ないと思います。新潟にとってこの3-2ゾーンの懸念は、ビッグマンの外国人3人が、恐らく浜松のトランジションに付いていけないという事です。なので、廣瀬HCがどのタイミングでこのゾーンに切り替えるかがポイントになりますね。」

-新潟はビッグラインナップ時の3人を含む、外国人選手4人のローテーションが鍵になりそうです。
「正直、新潟は外国人3人、日本人2人と五分五分の勝負にしてしまうと、浜松が有利になるので、王道的な戦い方としては(外国人3人を)起用しないと思います。出来る限りマッチアップのズレを作る為に日本人3人、外国人2人のマッチアップにすると思います。ただその戦い方での秋田と浜松の違いは、やはり太田敦の存在が大きいです。彼がいることで、池田、根東がニクソン、アーノルドにマッチアップする事になりますので。ここの駆け引きの妙が面白くなりそうです。」

-逆に、浜松サイドから想定される事はなんでしょうか?
「中村HCは策士ですので、先のことを考えながら挑んでくると思います。基本的には浜松は使える選手が多い分、オプションが多いんです。浜松からすれば「新潟が3-2ゾーンをどこで出してくるか?」という観点より、「このシチュエーションであれば、この作戦」と準備してくると思います。中村HCには、余裕があると思いますよ。

浜松はこれまでもやってきたトランジションで攻めて来るのは間違いありません。どんどんギアを上げて、バスケットを狙ってくると思います。セミファイナルの秋田戦同様、新潟はそこに付きあってしまうと、後手を踏むことになると考えられます。どんどんダブルチームを仕掛けて走ってくる浜松に対して、新潟がターンオーバーすることなくしっかり自分達のバスケを展開することですね。戦術以前に。

レギュラーシーズンの最後に浜松と福岡の試合がありましたが(83-82、110-105で浜松が連勝)、やはりターンオーバーの数で浜松のペースになるんです。浜松のオフェンスは止めようと思っても止めきれない部分もありますので、失点、そしてトランジションの数を抑えてゲームをコントロールする為にも、ターンオーバーをしないというのがひとつの鍵になると思います。」

-するとオフェンスでビッグマンのリーチ、アシュビーがどれだけミスをせずにパスを捌けるか、ですね。
「そのリーチが、左のローポストにいると少ししんどい状況になるんです。彼はミドルに向かって左のフックシュートを放つのですが、浜松のディフェンスが、右45度からダブルチームを仕掛けてきます。これにより、リーチの得意な左のフックが減ると思います。」

-秋田戦で何度も見せていましたが、大きなステップからリングに向かう左のフックですね。
「浜松のディフェンスはいつも中間の位置を保っているんですね、ハイポストのちょっとリングよりに。これにより、リーチに少なからずプレッシャーがかかると思います。新潟は、ここからのオプションが欲しいですね。」

-ここからどうボールを捌くか。
「そこで新潟期待の日本人シューターですね。」

-新潟は浜松に対するオフェンスだけでなく、ディフェンスでも苦戦が予想されます。タレントぞろいの浜松ですが、新潟が焦点を絞るべき選手は誰でしょか?
「僕の個人的経験からすれば、とにかくアーノルドを止めることですね。富山が勝った試合でも、とにかくアーノルドを止めに行きました。浜松はディクソンが抜けてからバスケットがガラっと変わっているのですが、とにかくアーノルドが得点、スティール、アシストと活躍の場面が増えています。」

-新潟での最終戦でもそうでしたが、アーノルドにかなり負担がかかってますね。
「そうですね、かなりストレスかかってると思います。アーノルドを1回止めることによって、恐らく他の選手も止まると思います。

また、ディクソンが抜けてからバスケットを変えたというのもあると思うんですけど、(ディクソンの離脱後)トランジションの回数も点数も伸びていないんです。一番気になるのは、外国人選手の得点が伸びてないという事です。得点の比率からすると、日本人選手の得点だけが伸びています。かと言って、アテンプト(シュート試投数)はあまり変わってないんです。つまり、単純にシュートを打つことは打っているんです。外国人選手も。しかし、それを決めきれていない。」

-アーノルドがシューター型なのに対し、ディクソンは突破も出来る、パスも出せる選手でした。そのディクソンが抜けた事により、他の外国人選手に得点の場面で負担が増えているという事でしょうか?
「とにかくターンオーバーを誘ってディクソンがイケイケドンドン、そういったスタイルでやっていたと思うのですが、彼がいなくなったことにより、最初にボールを持つのがアーノルドという状態で、ボールがピタっと止まってしまう。そこで外国人選手が苦手とする戦術的、システマティックな部分が出てきている。そういった事が考えられます。」

-そのような状態でも、アーノルドの決定力がズバ抜けているのは事実ですからね。
「アーノルドとパーマーですね。」

-アーノルドの凄さは新潟戦でも目の当たりにしてきましたが、今シーズンのMVPに選ばれたパーマーについては、どのような点が優れているのでしょうか?
「オールスター戦で感じたのは、とにかく負けん気が強い選手という事です。チームが悪い流れになっていると、強引にではなく、自分の気持ちを体現する事ができる選手です。チームが苦しい時間帯にファウルをもらってきたり、FTをしっかり沈めたり。オールスターでのタイムアウトでの彼の発言など、それを強く感じましたね。」

-外国人選手にありがちな、気持ちが熱くなるばかりにプレーを見失ってしまうような選手ではないという事ですね。
「そうですね、スマートな選手なんです。ディフェンスが下がっていればあっさり3ポイントを決める。ディフェンスが出てくれば、中を攻めてくる。やはり彼がFTをしっかりもらってくるというのは、そういった部分が見えているんだと思います。スマートなだけでなく、柔軟性もある選手ですね。プレーの幅も広かったです。」

-新潟としてはこのパーマー、アーノルドを筆頭に浜松のオフェンスを完全に止めるのは難しいですから、チームとして守っていくしかないですね。
「そうですね。そして、一瞬のズレを攻めるしかないですね。その為にはターンオーバーをしないことですね。してしまうと完全に浜松のペースですから。」

-そのターンオーバーをしないためには?
「ガードの澤岻選手はキャリアもありますから、彼がしっかりやることと、浜松のディフェンスの特徴として、ガードの部分でのターンオーバーより、インサイドからのキックアウトだったり、ダブルチームで潰してのスティールが多いので、アシュビーとリーチ、彼らが上手く対応することです。」

-新潟はポストのパスアウトから、アウトサイドの日本人がどれだけシュートを沈められるかですね。
「そこで、根東は外で開かないことです。池田と小松はキックアウトからどんどん3ポイントを狙うべきなんですが、浜松がダブルチームを仕掛けた瞬間に、根東が空いたスペースに突っ込んでいく緩急を付けてあげたほうが、新潟としてはいいかなと思います。

アウトサイド一辺倒になってしまうのはちょっと。ダブルチームからのキックアウトでの3ポイントを落とすと、相手にディフェンスリバウンドのポジションを取られているので、トランジションに持って行かれやすくなります。シュートが落ちたときにどうするか?というところで、根東が仕事をしてくれると思います。」

-一方の浜松の選手に関しては、大口、岡田、友利、太田和、太田敦と、いずれも役者が揃っています。
「みんなプレイオフを経験してますからね。去年は大口が大当たりしました。友利もシュート入りますし。みんな一人一人の役割をしっかり認識して、それを徹底してますね。日本人選手もみんなプレースタイルが違います。大口と友利も違いますし、岡田も違うし、太田和も違う。そしてそれぞれの選手の武器を、中村HCがしっかり操ってますね。選手からすれば、ある意味簡単かもしれません。自分の仕事をこなすだけですから。」

-この試合で重要になりそうなポイントはありますか?
「興味深いのは、第2Qの戦い方ですね。浜松が太田敦を入れてきたときの、新潟の対応です。太田敦のミスマッチは、どのチームも苦しめられましたから。また、太田和もしっかりとしたバスケが出来る選手ですし。

ただ気になるのは、シーズン終盤の浜松の戦い方が、ちょっと浜松らしくなかったんです。地震のあとは、浜松らしさが欠けるゲームがありました。4月の福岡戦は浜松らしいバスケだったのですが、それ以外のゲームに関しては、もちろんプレイオフを見据えてのことだと思いますが、ちょっと違和感の残るゲーム展開でした。それが本当にプレイオフの為の準備だったのか、序盤でチームが完成しすぎてバテてしまったのか。その部分は気になりますね。」

-それでは最後になります。この試合の展開を予想すると?
「まず最初に新潟がイニシアチブを取り、浜松が徐々に詰めて、新潟が逃げきる。新潟がここ最近に見せていたバスケが出来れば、新潟が勝つと思います。

あと、新潟は80点~82点のゲームにしたいですね。走る時間、止める時間と、コントロールしたいと思います。以上です。」

-ありがとうございました。